鹿島印刷株式会社は2024九州印刷情報産業展で、アクリル製キーホルダーや付箋メモスタンドなどのグッズを紹介し、多くの来場者でにぎわった。今回は佐賀県鹿島市の同社本社を訪問し、大判フラットベッドプリンターなどを駆使した独自技術について聞いた。

鹿島印刷のブース。大型POPからガチャまで自社製作

紙器に強い鹿島印刷のルーツ

肥前鹿島(佐賀県鹿島市)の祐徳稲荷神社は、京都の華族から鍋島藩に嫁いだ花山院萬子媛が創立した神社である。山々や小川に囲まれた風光明媚な地に位置するのは、萬子媛が京都の風景を懐かしんだからかもしれない。

その祐徳稲荷神社から車で5分ほどの田園地帯の真ん中に作られた工業団地の一角に、鹿島印刷の本社がある。従業員60人を擁する同社に相応しい、立派な社屋だ。

鹿島印刷は1921年、家庭の常備薬、いわゆる「置き薬」を販売する業者が共同で「鹿島商事株式会社」を創立したのがはじまり。1942年に「鹿島印刷株式会社」に改称し、1988年に現在の工業団地に移った。同社が薬箱などのパッケージを強みとしているのもこのようなルーツがあり、CADによるデザイン・設計から印刷・製函までを請けている。神奈川県川崎市に東京営業所を構えているほか、佐賀市と福岡市にも営業所があり、九州一円を営業基盤としている。2023年8月にシール印刷に強い福岡市の有限会社田中凸版をM&Aし、封緘までをワンストップで行う体制を整えた。

フラットベッド機導入で多彩な製品開発が可能に

同社は2022年、大判フラットベッド型UVインクジェットプリンターを導入、同時にカッティングプロッターを増設した。フラットベッド型は通常のロール給紙型と異なり、寝台型のプレートに素材を載せて印刷する方式のため、木材・アクリル板・段ボールなどあらゆる素材に印刷できる。

同社のフラットベッド機も2500mm×1300mm、厚さ50mmの素材に印刷できる。同社の玄関口の壁面装飾や椅子もハニカムボードや段ボールで製作されている。中芯が強化された構造のハニカムボード製の椅子は、重さ100キロにも耐えられるという。

会社玄関のテーブルも紙製だ

フラッドベッド機と従来の粉体トナー機により製品開発の幅が広がった鹿島印刷は、2019年からプレミアムグッズブランド「Deaer」を商標登録している。「Deaer」は鹿島印刷の「鹿」と「親愛なる」を掛け合わせた造語である。

5月31日・6月1日に福岡国際センターで開かれた2024九州印刷情報産業展でも「Deaer」ブランドを全面に出した出展を行った。ブースの内装はもちろん、巨大ガチャも紙製で、同社のフラットベッド機で製作した。景品が当たることもあって、巨大ガチャには一般客を含む多くの来場者が列をなしていた。

景品の目玉はアクリル板で製作したキーホルダーや付箋メモスタンド。これらのアクリル製グッズは近年のトレンドでもある。そのほか、精緻な設計のポップアップカードやメモ紙入りパッケージなども、同社のパッケージ製作技術が生かされている。

伝統を守りつつ新しいことに挑戦

阿部寛之企画制作部部長によると、印刷会社はもちろん、小売・飲食業からの引き合いが早くも多く寄せられているという。アクリル製プレミアムグッズのほか、什器やプラカードなど、提案の幅は広い。

もちろん同社は紙器会社としての技術力も高い。ハイデルベルグ製4色機と2色機は「カラーコントロール」(機械学習による自動色調管理システム)やインライン検査装置など最新のシステムを搭載し、トムソン・自動落丁機・サックマシンなど後加工の設備も充実している。

阿部部長は「社名に印刷と付いていますが、印刷だけにこだわらない、さまざまなことができる会社と認知していただけるように、これまで培ってきた技術と伝統を守りつつ、新しいことに挑戦していきます。お気軽にお問い合わせください」と話している。

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