郵便料金の値上げは、2024年5月21日に閣議決定し、2024年10月1日から実施されたわけだが、正確には2023年のニュースともいえる。総務省は2023年9月に意見募集、同年12月には改正案を提出していたからだ。機を見るに敏な印刷会社は2023年12月には自ら「年賀状じまい」を顧客企業に通達していたし、年賀状印刷大手の下請け印刷会社は売上3割減を見込んだ経営計画を立てていた。ニュースになってからでは遅いのである。
印刷業界における影響は、年賀状・請求書・DMの3分野だろう。年賀状は2025年度は「年賀状じまい」特需が若干あるかもしれないが、中長期的には年賀状文化は終焉に向かうのではないか。請求書に関してはIT企業が郵便料金の値上げを機に一斉にペーパーレスキャンペーンを行っており、今だ6割といわれる紙の請求書がどこまで減少するのかが焦点である。
DMははがきや封筒が激減し、当面、ゆうメール便に移行するかもしれない。しかしゆうメール便もいずれ値上がりするだろうし、それ以上にゆうメール便の大幅値引きの特約を結んだ大手印刷・物流会社に仕事が集中するかもしれない。
いずれにせよ長期的には、DMは費用対効果がますます求められ、精緻なマーケティング施策を行うか、高額商品を高額所得者に撒くか以外は使われなくなり、貴重に、しかし希少になるのではないだろうか。