MIC株式会社(旧水上印刷)は2024年12月25日に東証スタンダードに新規上場する。
さかのぼること18年、全国の中小印刷会社を束ねる全日本印刷工業組合連合会は2006年、「業態変革」の第3ステージとして「ワンストップサービス」を提唱した。印刷産業の業態から見直すべしという組合の掛け声は非常に画期的だったけれども、第1ステージ「業態変革ミニマム」、第2ステージ「原点回帰」から大きく跳躍した「ワンストップサービス」に戸惑った組合員企業は多かった。販促物の企画から物流までの顧客のバリューチェーンを担おうという提唱を咀嚼できた印刷会社は少なかった。
正確な記録を持っていないが、提唱者こそが現MIC会長の水上光啓氏だったと記憶している。2008年に全日本印刷工業組合連合会会長に就任したのちも、全国を飛び回って「ワンストップサービス」の有効性を説いた。しかし日本印刷新聞の記者だった私は見る目がなかった。中小印刷会社の限られた経営資源で顧客のバリューチェーンを担うことなんてできない。餅は餅屋で、それぞれの得意分野を生かすべきだと主張した。「ワンストップサービスの可能性と限界」なんて記事を書いたこともある。
しかし水上印刷は着々とワンストップサービスを実践していた。東京郊外に物流センターを設け、大手コンビニエンスチェーンを説得し、販促物の物流代行を行ったのである。各メーカーが店頭に送らなければならなかった販促物を一元管理することで、物流コストを大幅に削減することに成功した。このスキームをドラッグストア等に横展開することで、MICは急成長していった。
MICの東証スタンダード上場は、新たなスタート地点だろう。これからも顧客のムリ・ムダを省き、創造的な時間を作り出すというビジネスモデルで成長していくだろう――と今の私は考えている。