【三輪直之社長インタビュー】シンクイノベーション、創業から12年で売上31億円に キャラクターグッズビジネス成長の軌跡を聞く

シンクイノベーション株式会社は2014年から始めたスマホケースのオンデマンドプリントで売上を伸ばし、BtoCからBtoBにも展開した。飛躍のきっかけはアニメキャラクターのグッズ製造とイベント事業で、売上を一気に31億円(2024年度)まで伸ばした。UVインクジェットプリンターなど65台のプリント設備も擁し、アクリルキーホルダー、アクリルスタンド、缶バッジなどあらゆるキャラクターグッズの製造も手掛けている。三輪直之社長に同社の成長の軌跡を聞いた。

スマホケースの受注生産が起点に

――三輪社長は2012年、23歳の時に個人事業主として起業されたと伺っています。
三輪社長 岐阜の高校を卒業し、鉄筋の現場(建設現場)で4年ほど働いたのちに、名古屋に出て、(ネット通販の)楽天市場でモノ売りを始めました。最初は中国からスマホケースを仕入れて販売していたのですが、起業して2年で月商1000万円ほどを挙げるようになったので、2014年にシンクイノベーション株式会社を設立しました。同時期にローランドのUVフラットベッドプリンターを導入し、スマホケースのオリジナルグッズの製造を開始しました。
――当時からプリントビジネスに着目していたのですか。
三輪社長 いえ、スマホケースの仕入れ・販売は大量の在庫を持たなければならなかったので、無地のスマホケースを仕入れておいて、受注生産でプリントするビジネスに切り替えたのです。私は起業してからイラレ・フォトショ(Adobe Illustrator/Photoshop)の操作を覚えたのですが、当時の技術でもオリジナルグッズの画像を無数に合成して楽天市場にアップし、(消費者から)受注してからプリント・出荷することができました。当時そういった合成画像を使った出品をする競合他社は数社しかなかったのと、在庫を持たないメリットがあったので、売上が2億円ほどに伸びて20台ほどのプリンターを導入するようになりました。
――消費者向けのオンデマンドビジネスが成長のポイントになったのですか。
三輪社長 いえ、BtoCのECビジネスはいずれ頭打ちになるだろうとの見立てで、2018年にOEM(BtoB)ビジネスを立ち上げました。球団や大手雑貨店、メーカーなどのグッズやノベルティを作るようになってから仕事が伸びました。売上は10億円ほど、機械台数は40台ほどになりました。
ただECビジネスもOEMビジネスも現在は横ばいです。なんとかしようと思い、2021年にMD(マーチャンダイジング=販売)事業部、2023年にはIP(知的財産)戦略事業部を立ち上げて、キャラクターのライセンスビジネスを始めました。おかげさまで、2023年度は売上17億円、2024年度は売上31億円になりました。
――MD事業部とIP戦略事業部との違いは。
三輪社長 MD事業部はキャラクターのライセンスを取得してグッズを販売する、IP戦略事業部はイベントの運営です。キャラクターの「モノ売り」と「コト売り」の違いといって差し支えありません。

日本アニメのグッズを世界展開

――キャラクタービジネスについて伺います。御社では「ハイキュー!!」「ブルーロック」「呪術廻戦」といった人気アニメのキャラクターのグッズを製造・販売されているそうですが、そういったライセンスを取得するのに、どういった営業展開をされるのでしょうか。
三輪社長 シンプルに版権元さまから、いかにいいタイトルのライセンスを取得するかにかかっています。当社のようにキャラクタービジネスを展開している会社は250社ほどあります。われわれのキャラクタービジネスの売上は10億円程度ですが、売上100億円規模の老舗会社もある。われわれはまだまだ後発です。

アニメキャラクターグッズの数々

――いわゆる「オタク市場」に対して、情報感度やセンスを持っていなければいいライセンスは取得できないものなのでしょうか。
三輪社長 こういうアニメが放送されますよといった情報は事前にクライアントなり、SNSなりで流れてきますから、それに対して、このようなグッズを作りたいのですが、と提案する形になっています。販売する大手雑貨店などとも定例の打ち合わせをしたりもします。私自身はライセンス取得についてはほとんどMD事業部に任せています。
――数ある競合のなかで、御社の強みは。
三輪社長 しいて挙げるとすれば書き起こしデザインを行っていることでしょうか。同じアニメのキャラクターでも、「mochocho」という独自の世界観のイラストで書き起こしています。「可愛い」と反響良く、「mochocho」で書き起こしてくれるなら、版権を貸してあげますよ、と言ってくださる版権元様もいらっしゃいます。
――御社の今後の成長エンジンはやはりキャラクタービジネスですか。
三輪社長 はい。「MD事業部」と「IP戦略事業部」が、「機械販売事業部」とともに伸びていくと考えています。世界のアニメ市場は約5兆円で、2030年には20兆円に成長すると見込まれています。日本のアニメは世界でもすごい人気です。キャラクタービジネスを行っている会社様もみな、「今後は海外に行った方がいいな」とおっしゃられています。日本市場は少子化もあり、現在が上限だろうといわれています。
――10年、15年前は「クール・ジャパン」といわれ、「ドラゴンボール」などのアニメの勢いがすごかったですが、現在は。
三輪社長 現在も日本のアニメはすごい人気ですよ。中国のイベントでは人だかりと行列でびっくりします。当社でもMD事業部の30~40%はすでに中国への輸出です。
――そうなのですね。中国への足がかりは。
三輪社長 大手出版社のアニメの放映権を持っている中国企業様からお問合せをいただき、契約することができました。
――海外では価格競争はないですか。
三輪社長 全くないです。海外の方がやりやすい。参入している会社はまだまだ少ないです。われわれは海外にメイド・イン・ジャパンのグッズを輸出していく。将来的には現地生産も考えていますが、メイド・イン・ジャパンのブランドを求める消費者も一定数いますので、国内の協力会社様にお願いしていきながら、国内生産に力を入れていきたいと思います。
中国ではグッズが出回っていますが、東南アジアやヨーロッパ、アメリカなどではまだまだですので、そういった地域にグッズを展開していきたいと考えています。

将来は機械メーカーに

――印刷業界からみると、御社の65台ものプリンターによる生産体制には驚かされます。
三輪社長 UVインクジェットプリンターを20台一気に導入した年もありました。現在の生産設備はUVインクジェットプリンター37台、大判インクジェットプリンター5台のほか、TシャツなどアパレルにプリントできるDTF(Direct to Film)プリンター、DTG(Direct to Garment)プリンター、刺繍機1台、シール印刷などができるデジタル印刷機など計65台が稼働しています。

数十台のインクジェットプリンターが並ぶ

――商材はどのようなものが多いですか。
三輪社長 現在はスマートフォンケースはごく一部で、アクリルキーホルダー、アクリルスタンド、缶バッジが売上の約30%を占めています。アパレルやタオル、トートバッグ、マグカップなど無数の商材がロングテールを担っています。
――先ほどお伺いしましたけれども、御社では「機械販売事業部」を立ち上げ、プリンターを協力会社に販売されています。
三輪社長 数年前から(自社の)機械も人も増やさない方針です。協力会社様に機械を販売するとともに、仕事も依頼していく。すでに内製化率は約40%ですが、今後10%程度にしていく。3年以内に売上100億円を目指していますが、機械も人も増やさずに達成することを目標としています。
――営業と生産に分けるとすると、今後は営業に力を入れられていくと。
三輪社長 その通りです。キャラクターのモノ売りとコト売り(イベント)を企画して、しっかり仕事を取っていくことに注力していきたいです。
ただ中期的には、機械の自動化を推し進めたいと思っています。すでに45万アイテムの商品に関して、受注と同時にデータをCSVで吐き出してプリンターにかけるなどの自動化を行っています。
缶バッジの自動製造機も2025年5月から稼働します。数千万円を投資し、メーカーに1から設計してもらい、月産1500万個を自社で生産できる体制を整えています。アクリルグッズのレーザー加工の自動化、アクリルキーホルダーの金具取付のロボット作業化、OPPへの梱包やTシャツのたたみの自動化などにも取り組んでいます。グッズ業界はかなりアナログの世界ですが、これから時給1500円、初任給30万円の時代になりますから、自動化の取り組みはかなりの価格競争力と納期対応の強化につながると考えています。

缶バッジ自動製造機
特別に缶バッジ自動機の図面を公開していただいた。

――長期的にはそういった機械を外販されるわけですね。
三輪社長 そうです。2~3年は自動化に取り組み、1年間ほど自社で稼働させてブラッシュアップさせていって、将来的には自動化された機械のメーカーになりたい。プリンターのメーカーは各社ありますが、われわれは(缶バッジ自動製造機などの)自動機械メーカーのポジションを取っていく。数年後には他メーカーに先駆けていち早く稼働実績のある自動缶バッジ製造機をリリースできると思います。
――すると「機械メーカー」としてのポートフォリオも構想しているわけですね。
三輪社長 「MD事業部」「IP戦略事業部」とともに「機械販売事業部」に大きな成長が見込めると考えています。

イベントに4万人が来場

――モノづくりについて伺ってきました。IP戦略事業部のイベント運営、いわゆる「コトづくり」については。
三輪社長 ユーチューバーグループの「ワイテルズ」さんをフィーチャーして「日本全国タワーばらばら合流大作戦」というイベントを行いました。札幌から福岡まで7つのタワーを巡りながら謎解きをするという企画で、中学生・高校生を中心に4万4000人の来場者を集めました。グッズも一人何万円も買ってくださる方もいらっしゃいました。引きこもりのお子さんが、ワイテルズさんに会いたいために外に出てイベントに参加してくれたりもしました。嬉しかったですね。
JR東海など大手企業が協賛してくださいました。巡回型イベントを行うと地域の有力企業様とも協業できますし、モノ売りとコト売りをミックスした企画が運営できます。
――そういったイベントを企画する人材は。
三輪社長 一人、優秀というか、「ぶっ飛んだ」クリエイターがいて、その周りのスタッフとともに企画・運営しているというイメージでしょうか。
――そういった人材こそが、ユニークな企画を立てられるのでしょうね。

最適な発注点管理による生産・物流体制を

――改めて伺いますけれども、プリントグッズのビジネスに最初から注目されていたのですか。
三輪社長 いえ、創業当時はプリンターに関してもまったく無知でした。UVプリンターでスマホにプリントできるんだ、と初めて知って感心したほどです。
――するとご自身のマインドとしては製造よりというよりかは、企画営業よりですか。
三輪社長 実はどちらかというと製造よりですね。機械の販売を担当しているのも私ですし、自動化の仕組みを考えるのも私です。設備投資にもリスクを恐れず「突っ走って」きました。企画・営業はほかの人材に任せて、チェックは私が行うという体制です。
――最後に御社の今後の展望を。
三輪社長 キャラクターグッズ市場はとうぶんシュリンクするとは思えないので、海外/国内を含めて、しっかり仕事を取っていきたいです。
それから、これからは自動で缶バッジが毎月1500万個作れるようになる。そうなると今後は1個1個の受注生産ではなくて、販売機会損失のないよう瞬発力のある(最適在庫の)見込み生産を行っていきたい。
――キャラクター商戦はあっという間にブームが来ては去るイメージがあります。
三輪社長 そうなのです。イベントが2週間あって、グッズが売れ残ったり在庫を切らしたりするよりも、発注点管理による(都度)生産を行うことで、最適在庫が可能になります。
究極的には物流倉庫に機械を置かせてもらい、受発注システムを活用すれば、最低在庫・短納期で直接大手雑貨店などに納品できる。そういった発注管理システムによる(製造・物流の)未来を考えています。
――物流会社がデジタル印刷機を導入する事例が増えています。
三輪社長 その方が将来性があるように思いますね。

おすすめの記事