
私は組織論が苦手だ。組織が苦手だからかもしれない。人を管理し、調整し、指示し、コントロールするという考え方がどうにもなじめなくて、結果、事業主として独立して生きる選択をした。「組織は戦略にしたがう」べきなのか「戦略は組織にしたがう」べきなのかはわからないが、戦略論を専門領域として、組織論からは距離を置いてきた。
とはいえ、企業を組織する経営者からご相談を受けるときに、組織論を避けて通ることはできない。そこで、組織論の大家として知られるヘンリー・ミンツバーグの『7つの類型と力学、そしてその先へ ミンツバーグの組織論』を読んでみた。
邦題は意訳で、原題は「Understanding Organizations…Finally!」である。確かに7つの類型が示されているが、本質的には以下の4つに類型しているといっていいだろう。
- 個人が君臨する「パーソナル型組織」…形態は「ハブ」
- 工程が定められている「プログラム型組織」…形態は「チェーン」
- 専門職の寄せ集めである「プロフェッショナル型組織」…形態は「セット」
- プロジェクトの遂行のために協同する「プロジェクト型組織」…形態は「ウェブ」
ミンツバークが指摘しているように、すべての組織が4つとか、5つとか、7つに分類できるわけではないし、例えばファーストリテイリング社(ユニクロ)は柳井正が君臨する「パーソナル型」であり、粛々とバリューチェーンにのっとって作業する「プログラム型」であり、デザイナーがおのおののアパレルのデザインを決める「プロフェショナル型」であり、ヒット商品を開発するプロジェクトのために協働する「プロジェクト型」かもしれない。角度によって組織の見え方は変わるのであり、そう単純なものではない。
だが私は、ミンツバーグの組織論を読んでみて、目から鱗が落ちる思いがした。人を管理し、調整し、指示し、コントロールするという組織図自体が、先入観に囚われているということである。単純にいうと、いわゆる「ライン&スタッフ」のように軍隊的な階層が前提ではなくて、組織は空港のネットワークのようにハブ型でもいいし、プロフェッショナルが自律的に働くセット型でもいいし、蜘蛛の巣(ウェブ)のようにつながりあった集団でもいいということである。
330ページの大著(といってもかなり読みやすい)が読みたくなければ4類型を解説した第3部まで読めばいいし、それでも嫌ならば太字だけを目で追ってもいいし、そんな時間もなければ164~165ページの表を眺めるだけでもいい。組織とはライン&スタッフのことだという私のような先入観の持ち主であれば、購読をお勧めする。
私論を追加するとすれば、ミンツバーグの類型は「人と人」だけでなく「企業と企業」にも当てはまるのではないかということである。自動車産業のように無数の下請けの上に大企業が君臨する産業は「パーソナル型」あるいは「プログラム型」かもしれないが、プロフェッショナル企業同士が合同する「プロフェッショナル型」もありだし、気心の知れあった企業同士が協業する「プロジェクト型」も大いにありだろう。