
段ボール・紙器印刷・デジタル印刷ソリューションを展開する共進ペイパー&パッケージ(兵庫県神戸市)は、M&AやB1インクジェット印刷機「インプレミアNS40」を導入するなどし、急成長している。「極小ロット・メガ品種・多店舗発送」など独自のビジネスモデルを構築している同社の鍛治川和広社長に、将来展望を聞いた。
デジタル印刷が成長ドライバー
――2024年12月以来のインタビューです。昨年はM&Aや、デジタル印刷部門のハコプレ事業が大きく伸張するなどして、連結で売上100億円を達成されました。「次の10年で売上200億円」を目標に掲げられましたが、今年はどういった1年でしたか。
鍛治川社長 ここ2年間でデジタル印刷部門の売上高が10億円ほど増え、急速に成長した結果、人手不足、場所不足、経験不足も重なり、品質トラブルなどの「出血」が多く、「止血」に走り回っていた感覚で、反省の多い一年でした。場所不足の解消に工場のさらなる新設も考えていたのですが、建築費が10年前の倍以上に高騰しており、冷静になって「30年後以降もデジタル印刷工場を稼働できるか」を考えたとき、ここ最近のAIを中心としたテクノロジーの進化が驚異的なスピードであることから、デジタル印刷ビジネスが30年後以降もあるという保証はないと考えるようになりました。10年後は見通せても30年後は見通せない。そうすると土地を買うよりも賃貸にした方がよりフレキシブルに経営できるのではないか、といったマインドチェンジもありました。
――成長戦略よりも足元の利益率向上にマインドチェンジされたということでしょうか。
鍛治川社長 いえ、活力を生むためには売上の成長も重要だと考えています。これからも売上の面でもグループを成長させていきたいと思っています。
当社は段ボール・印刷紙器・デジタル印刷の3本柱ですが、段ボールと印刷紙器は利益率が低くとも30年後もあると思います。しかしデジタル印刷のビジネスモデルは、今は利益率が高くても30年後はわからない。あらためてメーカー(設備)寄りのポートフォリオも強化した方が、経営的にもバランスが持てると思いました。
――逆の見方からすると、今現在の成長ドライバーはやはりデジタル印刷ですか。
鍛治川社長 その通りです。昨年M&Aを行ったカルネコという会社では大判フラットベッドプリンター3台で什器を製造していますが、このたび毎時300枚のカットが可能なデジタルダイカット機「ZERO」(NSK製)を導入しました。ロット200、300でもデジタル印刷機でこなせなければ、本当の意味でのオンデマンド什器とはならない。そのための第一歩が「ZERO」の導入だと思っています。カルネコは日本一のオンデマンド什器の製造会社になるという目標が掲げています。
――什器のオンデマンド印刷はブルーオーシャンかもしれないですね。
鍛治川社長 什器は組み立てると容積も大きく、在庫を持つとコストもかかり、その上、使われるか使われないかわからない(廃棄率が高い)製品です。そういった課題にオンデマンド印刷で応えることは、社会的にも意義があると思います。また別のグループ会社のメニューデザイン研究所でも、飲食店のグラスの印刷の製造体制を整えました。リアルの価値が再認識される中でとても面白い仕掛けができると思っており近いうちに発表できるかと思います。
平均ロット42枚、年間35万ジョブをこなす
――前回「スマイルカーブ理論」を掲げられて、デザインやデータ分析などフロントからロジスティックスまでのバリューチェーンを握ることの重要性を教えていただきました。そのバリューチェーン上の会社をM&Aする構想などはお持ちですか。
鍛治川社長 WMS(物流マネジメントシステム)とMISの連携などはすでに取り組んでいます。(物流倉庫が)自社の関東工場(千葉市)と遠くてもシナジーはありませんし、近くてもノウハウがなければM&Aの意味がありません。今はフロント(サービス側)を強化したいと思っています。
――現在フロントで足りないリソースとは何でしょうか。
鍛治川社長 クライアントなりプラットフォーマーの会社様なり、各社がPOSデータや受注データを持っています。これらのさまざまなデータを整形(クレンジング)して、一元化されたデータを「(富士フイルムビジネスイノベーションのソフトウェア)プロダクションコックピット」に投げ込むワークフローを構想しています。印刷通販のプラットフォーマーなど顧客の発注データを豊富に持つ会社をパートナーにしたいと考えています。
――パッケージの生産管理は、工程が複雑で難しくないですか。
鍛治川社長 紙の規格を絞ればほとんど問題ありません。POPなどもグルーピング(ギャンギング)できます。1件あたり平均42枚、年間35万ジョブを、60万件を発送しています。先ほどのワークフローが完成すれば、「極小ロット・メガ品種・多店舗発送」のビジネスモデルが完成すると思っています。
――御社は昨年12月に小森コーポレーション「インプレミアNS40」を導入されました。開発元のランダ社が債務調整手続の申請をするなど騒動がありましたが、見通しは。
鍛治川社長 救済したファンドが3年で再建するという計画を立てていますし、インクなどの供給面は落ち着いていることもあり、現段階では楽観視しています。
――B1インクジェット印刷市場という意味では、ユニークなポジションを取れるかもしれないですね。
鍛治川社長 そうですね。A1,B1のポスターなどの市場もありますし、仕事をよほど集められる会社でないと導入できない機械だと思います。
スマートファクトリー実現へ
――スマートファクトリー構想を持たれていると伺っています。
鍛治川社長 海外のAGV(自動搬送車)だけが動いているような無人化された工場を構想しています。ただ当社では名刺大から長尺ポスターまであって、それらを個別にピッキングしたり、梱包したりするのは難しいとも考えています。
――(ピッキングに関しては)自動化の前に、ミスを防ぐシステムが重要かもしれませんね。
鍛治川社長 その通りです。順番としてはそれです。製造工程の自動化については、来年夏に向けて取り組んでいきたいと思っています。
――パッケージは工程が長いし多いですから、取り組みがいがありますね。
鍛治川社長 書籍も工程が多いですが、(ブック・オブ・ワンなど)デジタル印刷で自動化ラインを構築されています。(海外のように)ペーパーバックなど仕様が標準化されていればうまくいく。ベタが多くインク量が多いですとか、特色が多いなどパッケージ業界ならではの特徴がありますが、スマートファクトリーを必ず実現したいと思っています。













