「TOKYO PACK 2024」(2024東京国際包装展)が10月23日から25日まで東京ビッグサイトで開催され、2313小間725社が出展、来場者延べ22万1301人を集めた。各社とも総じて「サステナビリティ」(持続可能社会)を謳っていたが、特にプラスチックやアルミ箔に代替する高機能素材の提案が目立った。フレキソ印刷はもちろん、デジタル印刷やEB硬化型インキによるオフセット印刷においても、環境面でのメリットが強調された。
脱アルミ・脱プラスチックのアピール目立つ
印刷会社からは大日本印刷㈱、TOPPAN㈱、共同印刷㈱、大阪シーリング印刷㈱、㈱千代田グラビヤ、セキ㈱、㈱吉田印刷所、野崎印刷紙業㈱、大信印刷㈱など多数の出展があった。
大日本印刷㈱はX inspiration(クロスインスピレーション)と銘打ってブースをX状に仕切り、①技術との掛け合わせで新たな価値を創出する②サプライチェーンをより強固にする③テクノロジーで人手不足を解消する④持続可能な社会をめざして――の4つの課題解決を訴求していたが、やはり包装資材の環境対応に注目が集まった。出展社セミナーでは、「脱アルミ箔」に焦点を充て、アルミ地金1トンにつき1家庭3~4年分の電力を消費する環境面のみならず、ギニア・ロシア・中国などの地政学的リスクによる供給面の不安からも脱アルミ箔が望ましいとし、「DNP透明蒸着フィルム IB-FILM」などの機能性フィルムへの代替を提唱した。講師によるとこれらへの代替によりCO2が10~20%削減できるという。
TOPPANブースは初日午後には立錐の余地がないほど来場者でにぎわった。世界トップシェアを誇るバリアフィルム「GLバリア」によるナショナルクライアントの包装資材の数々が展示されたほか、紙製包装への代替もアピールしていた。飲料や菓子のみならず食用油やレトルトカレーのパウチまでが紙製というのは驚きだ。セミナーではこれらの事例を紹介したのち、最も注力しているという工場内廃材や試し刷りのOPPの脱墨再利用などのPIR(製造工程のリサイクル)についても紹介した。
大阪シーリング印刷は、ボイル耐性を持つシール「yudeno」を参考出品していた。
セキ㈱は愛媛県伊予市の水性フレキソ印刷工場での環境低減により、マルハニチロやサントリーなど大手ブランドオーナーに採用されている実績を強調した。新潟県五泉市の㈱吉田印刷所はOPPに代わる半透明素材グラシン紙を使った包材「グラスパック」を提案した。DM用封筒や書類用ファイルなど、すでに多数の採用実績がある。
パルプ由来のセルロースが再評価
製紙・段ボールメーカーからは日本製紙㈱、王子ホールディングス㈱、北越パッケージ㈱、クラウンパッケージ、㈱レンゴーなどが出展した。
最大級のブースを構えた王子ホールディングス㈱は「グリーン・イノベーション」をテーマに数十もの環境製品が並び壮観だった。「2024日本パッケージングコンテスト」で入賞した11作品も展示しており、そのうち経済産業大臣賞を受賞した「紙エール デザインウインドウ」も半透明なFSC認証紙を使用した環境対応製品である。
段ボールの名付け親・井上貞治郎を創業者とする㈱レンゴーが、出展社セミナーではあえてパルプ由来であるセルロース(セロファンやビスコパール)による芳香剤や養殖などソリューション展開を紹介し、プラスチックの代替をアピールしたのも象徴的な出来事だった。講師は「斜陽といわれたセルロースが生分解やバイオマス性により再び注目を集めている」と結んでいた。クラウンパッケージもシェルフ・レディ・パッケージの「バリットボックス」などの多彩な製品のほかに、パームヤシの廃材から作った紙を別ブースを設けて展示していた。
開始剤・VOCレスのEBインキ
インキメーカーからはDIC㈱、東洋インキ㈱、サカタインクス㈱、㈱T&K TOKAなどが出展した。このうち女優の吉岡里帆がイージーピール(剝がしやすいシール)などをPRするCMで訴求したDIC㈱は、いわゆる3R(リデュース・リユース・リサイクル)に加え、リデザイン・リニューを加えた5Rをテーマに掲げ、それぞれのコーナーを設けていた。DICは印刷インキのみならず諸材料を扱う世界的化学メーカーであり、出展社セミナーでは①非脱墨②脱墨③脱墨+脱ラミ--の各ステップの環境ソリューションを紹介したが、とくに③のインキやラミコート剤をフィルムから除去し、高純度なリサイクルを実現する「DeReSus(デリーサス)」(開発中)の取り組みを強調していた。
東洋インキも出展社セミナーを開催した。同社はEB硬化印刷をオフセット印刷機メーカーRMGTと共同開発中である。EBインキは開始剤やVOCが必要ない点で、UVインキに勝る。またEBトップコートは包装材のおもて面に使用することができ、減層・減プラスチックにつながる。
デジタル印刷も環境側面をPR
デジタル印刷では㈱日本HP、㈱SCREENGPジャパン、富士フイルムグラフィックソリューションズ、エコスリージャパン㈱、コダック合同会社、㈱ミヤコシなどがポスターやサンプル製品を展示していた。ブラザー工業㈱もドミノブランドのコンティニュアス/サーマルドロップオンデマンドの両方のインクジェットヘッドを展示していた。
手作業に比べ劇的効率化もたらす自動機
そのほかの設備ではTシャツなどのオリジナルプリントで知られる㈱イメージ・マジックが「たたみ・袋詰め」「仕分け」「梱包・出荷」の各自動機を実演していたのが目を引いた。一見アナログな機械の動きであるが、例えばTシャツのたたみは1枚9秒で済み、手作業に比べて80%作業時間を削減できる。同社はオンデマンド印刷会社であるが、インクジェットプリンターからこれらの機械までを同業他社に販売している。競合してでもオンデマンドプリントの市場を拡大したい同社の意気込みが感じ取れた。
印刷機器商社の㈱光文堂はラベルのレーザーダイカット装置などのほか、自走式ストレッチフイルム包装機「KBDモーションラッピング」を実演していた。小型の自走機が段ボールの周りを回りながらフィルムを巻くユニークな動きであるが、最大毎分95mのラッピングが可能とのことである。
高機能包材は持続可能性社会の切り札
パッケージはマーケティングツールでもあるが、各社それ以上に環境面をアピールしていた。リデュース・リユース・リサイクルの3Rは当たり前で、さらに「リニュー」「リデザイン」を複数の企業が提案していた。要するに新しい素材への代替や、素材の再設計である。プラスチックや箔アルミなどに代替するフィルムやコート剤、セロファンや紙である。
バリア性が高く食品の劣化を防ぐ高機能包材はなくなるどころか、むしろ持続可能性社会の切り札である。これからも大手メーカーはこれらの高機能包装材の開発を競い合い、高付加価値を追求していくだろう。コモディティのパッケージ印刷の市場に隙間が空き、われわれ中堅・中小印刷会社にもチャンスがくるかもしれない。いずれにせよ大日本印刷、TOPPANをはじめとする大手印刷会社の動向を注視する必要がある。