ブームは沈静化したともいわれているが、生成AIは着実に印刷業界に根付いている。特にレタッチにおいては、塗足しも切り抜きもプロンプト一つで思いのまま、今までのレタッチ作業はなんだったのかと思えるくらいの手軽さである。逆に言うとレタッチの自動化によりデザインの付加価値がAIに奪われているといもいえる。画像生成自体の出来はまだまだで、ポスターや表紙に使うのは時期尚早のように思えるが、デザイナーの助手としてはすでに実用段階に入ったといって間違いない。
ChatGPTやGeminiといった大規模言語モデルや、AdobeFireflyといった画像生成AIばかりが注目されるが、マルチモーダル生成AIといって、映像から音楽まであらゆるデータをAIに取り込んで、あらゆるコンテンツを生成する日も近い。旅行代理店がプロンプトを打つと、ポスターやCMを生成し、旅行プランを作成し、予算までを計算してくれる時代になる。そこに印刷会社がどこまで入り込めるかが問題となる。
ところで、AIは生成AIだけではない。大量のデータから学習した特徴に基づいて「生成」を行うのが「生成AI」であり、「予測」を行うのが「認識AI」である。認識AIはすでにスパムメール判定や顔認識、売上予測などに活用されている。
例えば、大日本印刷は顧客企業の広告の予算配分をAIで算出する「DNP販促最適化AI」の提供を開始した。コンビニ各店舗の広告予算・店舗情報・商圏情報をAIにインプットすると、折込チラシやYouTube動画など各媒体への予算配分を抽出してくれる。同社は今後、チラシや動画などのコンテンツ制作から配信までをシームレスにつなぎ、広告効果の最大化をめざす。
佐賀県佐賀市の総合印刷会社である福博印刷㈱は、AIで顧客をスコアリングし、スコアの高い顧客にDMを送ることで、DM効果を最大化する「AI×DM」を展開し、金融機関の大口顧客獲得につなげている。
これらの動きから未来を予測するとこうだ。企業がAIに「1000万円で新商品の売上を最大化してほしい」と指示すると、AIがターゲットを分析し、販促手段ごとの予算を振り分け、ポスターやチラシをデザインし、印刷する。つまり「AI to P」の時代がくるということだ。