国際印刷機材展drupa2024が5月28日から6月7日まで、ドイツのメッセ・デュッセルドルフ見本市会場で開かれ、1646社が出展、約17万人が来場した。8年ぶりの開催にもかかわらず、前回の約26万人から大幅減となった。最盛期(1990年)の44万4000人と比べると見る影もない。
drupaは1951年の初開催以来、常に印刷技術の未来を示してきた。1990年のDTP、1995年のCTP、2000年のデジタル…ところが、2004年のJDFワークフローから様相が変わってきた。2008年は「インクジェットドルッパ」と呼ばれ、2012年にはランダ社のベニー・ランダ氏が「残りの98%の市場獲得を目指す」と高らかに宣言したが、2016年、そして2024年になっても、インクジェット印刷機がオフセット印刷機にとって替わる様子はない。
毎回drupaを総括するテーマが識者から示されるが、今回も中国メーカーの台頭が目立ったという意味で「チャイナ・ドルッパ」と呼ばれる程度で、革新的な機構や研究開発費を投じた新技術は見られなかったというのが大方の見方である。drupa2016では、デジタル加飾やレーザーダイカットなどの技術革新がかろうじて見られたが、今回はまたしてもランダ社のプレゼンテーションが話題の中心になったところからも、印刷技術の停滞が見て取れた。
ランダ社のナノグラフィー技術は、インクジェットでインクをベルトに吐出し、メディアに転写されるため、再現性に優れるという触れ込みであり、B1サイズで毎時1万1000回転を実現している。実用段階に入ったと判断し、ランダ機の導入した日本企業もある。
一方ベルトを介さない直描式のインクジェット印刷機もすでに市場に普及している。乾燥エネルギーを消費する水性インクと、速乾性のLED-UVインクのどちらがエコなのか、プレコートを引いた方が印刷適性がいいのか、引かない方が風合いがいいのかなどの論点はあり、議論を深めなければならない。
オフセット印刷機は毎時2万2000回転、24ジョブをこなす印刷機、無人刷版交換システムによる自動化など、それなりに進化を遂げている。オフセット印刷機は古いと切り捨てるのは早計だと感じる。
商業印刷からパッケージ印刷へ重点がシフトしたのも大きな特徴である。DMやチラシといった商業向けメディア自体が、サステナブルという点でも大きな岐路に立っていることを感じさせた展示会だった。