【page2025レポート】技術革新目立たずも、自動化・スキルレスが加速

印刷総合メディア展「page2025」が2025219日から21日まで、東京・池袋のサンシャインシティで開催され、144社の出展と2万4580人の来場者を集めた。デジタル印刷機を含め新技術・製品の提案は少なかったものの、DXによる業務改善・スキルレス・自動化の提案が目立った。

インクジェット印刷機は理想科学工業1社のみ

前回のpage2024レポートは「トナー/インクジェットの実用機そろう」と題したが、今回はインクジェット印刷機の実機出展は1台のみという意外な結果となった。市場をリードしていると思われる富士フイルムのB2インクジェット機「JetPress」シリーズも、国内数百台単位で普及しているとされるSCREENの同「Truepress JET」シリーズも、日本初号機が共進ペイパー&パッケージ関東工場(千葉市)に入った小森コーポレーションのB1インクジェット機「Impremia NS40」も、drupa2024で高い評価を受けたキヤノンの「varioPRINT iX」シリーズも実機展示がないのは例年どおりとしても、昨年のpage2024で華々しくデモンストレーションを行った京セラの「TASkalfa15000c」などの新規参入組の実機展示もなかった。京セラは「TASkalfa15000c」のパネル展示とサンプル紹介を行っていたが、説明員によると同機は開発中で、導入実績もゼロだという。昨年の発売開始から開発中に後退したことになる。1200dpi×1200dpiの枚葉A3寸延、毎時9000枚(A4換算)、プレコートなしの直描方式だが、実績のある各メーカーとの激しい競合が想像できる。理想科学工業はホリゾンブースでの出展となった。インクジェット印刷機の導入自体は進んでいると思われるが、導入事例の紹介も少なく、実感の乏しい展示会となった。

トナー機はさらなる自動化が焦点に

粉体トナー機も各社がフラッグシップ機の実機を出展していたものの、大きなイノベーションがみられたとはいいがたい。富士フイルムは昨年と同様「Revoria PressPC1120」を出展、ワンパス6色、毎分120ページ、52400g/㎡の用紙対応力によるさまざまなアプリケーションを提案していた。コニカミノルタは今春発売予定の「AccurioPress C14010S」を実機展示。白打ちが可能で、重送した場合の用紙排出と再印刷などの自動化機能を備える。キヤノンは「imagePRESS」シリーズのインライン全数検査などの自動化装置を強調していた。

コニカミノルタの新製品「AccurioPress C14010S」

デジタル印刷部門で昨年と異なるのは液体トナー機「Indigo」を擁する日本HPが出展していたことだ。ただしこちらもアプリケーションのサンプル出品のみで、特別セミナーでも新技術や導入事例の紹介はなかった。

オフセット印刷部門はハイブリッド環境や無処理版の提案

オフセット印刷機メーカーからはハイデルベルグが唯一出展していた。自社のオフセット印刷機、キヤノンOEMのインクジェット印刷機、リコーOEMの粉体トナー印刷機のポートフォリオを擁する同社は、同じ絵柄の3サンプルを比較して見せ、色味の違いがわからないほどのハイブリッド環境が構築できることを強調していた。

ハイデルベルグのハイブリッドワークフロー

また昨年に引き続き、ドットをクラスター状に形成させることでインク量を20%削減できるスクリーニング技術「マルチドット」を提案していた。コダックが機上現像方式の完全無処理版を、エコスリーがガミング方式の無処理版をそれぞれ提案していたのも昨年と同様である。

社員を幸せにする「見える化」

昨年から引き続き目立ったブースは、クイックス、佐川印刷、正文舎の3社がデジタル印刷機メーカーや後加工機メーカーとともに自動化・可視化したワークフローの普及をめざす「印刷革新会」である。会場内セミナーでは3社がMIS「プリントサピエンス」を活用した経営分析手法について語った。

印刷革新会のセミナー

案件ごとの損益分析ができ、個々の社員の成績が共有できるMISだが、結局経営判断するのは経営者であり、主体的・創造的な仕事をするのは社員である。例えば1案件で赤字になっても、その顧客全体の仕事では黒字になった場合、顧客を切るか切らないかは経営者の判断である。工程の自動化や社員の成績の見える化も、究極的には社員がより自分の力が発揮でき、より創造的な部署に配属するためである――大要以上のような主張は賛同できる。今回マーケティングオートメーションを前面に出し、原稿を受け取るという「待ちの営業」ではなく、マーケティング施策を提案する「攻めの営業」を目指すという視点も首肯できる。

新規事業の原資をねん出する業務効率化

前回につづいて思うのは、スキルレス化、省人化の先にある印刷産業の未来である。昨今の人件費高、採用難を鑑みて、スキルレスや自動化に焦点が移るのは自然の流れである。しかしスキルレスが進んで失われるのは印刷会社の付加価値である。物流会社やBPO会社なども参入すると、印刷業界の垣根がなくなる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)はむしろやって当然のことであると考える。会社の競争優位を生み出すのはその先の新規事業である。効率化を追求して利益を創出したうえで、利益をいかに新規事業に投入するかにかかっている。

クロスメディアとさかんに言われてきた印刷業界だが、同展ではホームページ制作・運用月額数千円で約50万件の実績を持つペライチなど、こちらもすでに激しい価格競争が繰り広げられている。印刷にもとどまらない、メディアにさえとどまらない新しいビジネスを開拓するための原資を印刷業の業務改善で稼いでおくというシビアな視点が必要なのかもしれない。

おすすめの記事