
チャンスメーカー株式会社(福井県坂井市)は従業員270人、売上高80億円のノベルティグッズおよびダイレクトメール販売会社。通販サイト「販促花子」のみならず、約80人の営業パーソンが電話営業して、全国約12万社の顧客を獲得している。平林社長に同社の営業スタイルと商品開発力について聞いた。
直近1年で130人を採用
――御社はもとは福井県の伝統的な中小印刷会社でしたが、平林社長が就任されてからノベルティグッズ販売に舵を切り、いまや顧客12万社、売上高80億円(2024年度/達成見込)の販促会社に成長されました。最近、取り組まれていることは。
平林社長 営業も含めて、直近1年間で約130人を採用しました。平均年齢は33.7歳と若い会社です。役員も55歳の私をのぞくと30代ばかりです。大手町に東京本社を構えたこともあって、優秀な大学や企業からどんどん入社してくれました。
2025年4月からさまざまな新事業に取り組んでいます。学生ベンチャーをM&AしてLINE広告のマーケティング事業を開始したり、通販会社のお客様に向けて福井県に物流拠点を設けたりしています。なかでも力を入れているのは、ノベルティグッズのプライベートブランド(PB)化です。今までは名入れ商材が中心でしたが、売れる商材はPB商品として、100円ショップに販路を開拓したい。来年度(2025年度)は売上高100億円をめざします。
――ノベルティグッズの通販サイト「販促花子」で有名な御社ですが、前回(2023年8月)にインタビューさせていただいた時の「当社は営業会社ですよ」とおっしゃられていたのが印象的でした。
平林社長 営業部隊は約80人います。基本的にノベルティとDM(ダイレクトメール)を商材に、まっさらな(新規の)顧客リストを与えて、がんがん電話営業しようという姿勢です。最近は(販促花子だけではなく)電話営業でも競合に知られるようになりました。「西(福井県)から東京の市場を荒らしにきた」とか。でもそんなことを気にしていては営業はできませんよね。
――私も個人的には新規を営業しないと会社は成長しないと考えています。
平林社長 営業にもランクが決まっていて、一番下のランクは1日100件の営業電話をしなければならないというルールがあります。ランクが上がるごとに既存のお客様も増えてきますから、ノルマとする営業電話の数は減ってきます。それでもすべてのランクに1年で新規顧客獲得をしなければならない数がルールで定められています。
顧客リストは放っておくとどんどん劣化するものだと思っていますので、顧客はどんどん生み出さないと。

――印刷業界はあまり新規営業をしない印象があります。
平林社長 確かに印刷業界の方はあまり営業電話をしないですし、ベテランの営業パーソンが多いですから、当社の若い営業パーソンの電話は受けていただきやすい状況にあります。一方DMに関しては大手1社と激しく競合しています。ノベルティは(営業の強い)大手の2社と競合しますが、まめに営業すればお仕事をいただくことも多いです。(印刷機械を持つ)有力印刷会社とは戦いません。勝てない市場では戦わないです。
――その点の柔軟性も強みですね。多くの印刷会社は自社の印刷機を回すために仕事を取ってくるという営業が多いですから。
平林社長 当社はオフセット印刷機を持たず、オンデマンド印刷機だけなので、お客様が必要なければやらないという戦略です。
ソリューション営業はしない
――モノを売るのではなく、顧客の課題を解決する「ソリューション営業」がトレンドになっていますが。
平林社長 ソリューション営業って、スキルがいりますよね。お客様の困りごとに応えるくらいのスキルは、営業3年以上経験しないとなかなかできないと思います。当社の営業パーソン約80人のうち、半分以上が入社1年未満の若手社員です。それならばとにかく決められた商品を売る。お客様ごとにカスタマイズした提案はしない。ソリューション営業は社内に滞在して考える時間が必要ですし、ルールも柔軟にしなければならないです。
――なるほど。決められたルールの方が営業も覚えやすいですよね。
平林社長 当社はガチガチにルール(≒営業マニュアル)が決まっていますし、商品も値段も決まっています。ですから入社して5日目くらいには営業電話してもらって、2週間くらいで仕事をとってもらうようにしています。
――電話営業が中心ですか。
平林社長 そうです。電話で商談を完結してしまうか、電話でアプローチして、顧客に訪問する。ただし福井本社は全国が営業エリアなので基本的に訪問営業はしませんし、東京本社も一都三県に限定しています。
――MA/CRMのソフトを使って営業を自動化している会社もありますが。
平林社長 当社はCRMを強化しているわけではないですが、メールマガジンを送った相手に対しては、いついつまでに(フォローアップの)電話をしなさい、などのルールを決めています。
――電話営業で断られ続けたりすると、心が折れる営業パーソンはいませんか。
平林社長 そこがわれわれが一番気にかけているところで、当社では「褒める文化」を大切にしています。新人には必ず上司がロールプレイングに付き添っていますし、1on1のミーティングも週に1度は行っています。私自身も社員から相談があったら、どんなに忙しくても、どんな相談であっても必ず仕事の手を止めて話を聞く。
それから「1日のKPIは達成しようね、少なくともチームで達成しようね」と声掛けをしています。チームでやれば、仲間が頑張っているのに、めげたりしていられない。そして一番は、とにかく行動すれば、成果はついてくるよね、という「道筋」を作ってあげるのが、われわれの役割だと思っています。
――成功の道筋といえば、キャリアパス(キャリアアップの道筋)についても当てはまりますか。
平林社長 1年後はこんなに成長した先輩がいるよ、こんなに成功した先輩がいるよ、と示すことができているので、頑張ろうと思ってもらっていると思います。
――営業パーソンの心が折れないために「勝てる営業マニュアル」があるわけですね。
平林社長 そうです。トーク集などもきちんとあります。営業マニュアル通りに話していれば慣れてくるし、実際にはそんなに心が折れたりはしないですよ。
――それと同様に「勝てる商品」が重要なのではないでしょうか。
平林社長 その通りです。われわれ(経営陣)は、営業が活躍できるように「勝てる商品」「面白い商品」を開発するし、DMだったら「早く、安く、安全に」届けることができる工場を作っていくだけなので。
――平林社長を20年前から存じ上げていますが、営業パーソンがチラシ1枚でも営業できるようにしようと、うちわやタオルを販売されていたころと首尾一貫している気がします。
平林社長 本当はソリューション営業が正しいのかもしれません。しかし当社は20代の若手営業パーソンが主役の会社なので、難しいことはさせない。彼らが活躍できる場を提供していくことがわれわれの仕事だと思っています。
約6000点の商材を武器に

――営業について伺ってきましたが、商品開発については。
平林社長 現在約6000点の商品を取り扱っていますが、1か月に50~100個アイテムを増やしています。とくに最近、商品力を強くしようということで毎月海外に行っています。商品開発部隊は1人につき100個のアイデアを出すことをノルマにしています。
――最後に印刷会社にメッセージはありますか。
平林社長 最近は紙の印刷だけでなく、グッズの製作をされている印刷会社様が増えているのは存じ上げています。例えば20アイテムを自社で作っていらっしゃっても、当社の80アイテムを採用いただければ、お客様に提案するだけでも満足度は上がると思います。新規のお客様に対しては、やはり商品の力で営業することが一番ですけれども、既存のお客様に対しては、商材の幅を広げて、お客様に合わせた営業をするのが一番だと考えています。お気軽にお問合せください。