【キンコーズ・ジャパン】プリント+αの新しいオンデマンドソリューションを開拓

キンコーズ・ジャパン株式会社(本社=東京・港区三田)は街のプリントショップとしてのイメージが強いが、生産工場を2拠点持ち、ドキュメントから看板施工まで幅広いサービスを提供している。またビジネスシーンのみならず、クリエイターエコノミーや推し活ブームを受け、ものづくりの体験の場やIPビジネスにも進出している。広報・サステナビリティ推進部の野上朝子部長と手塚郁美シニアスペシャリストに、キンコーズのオンデマンドソリューションについて聞いた。

日本の地域特性を生かした展開

――キンコーズ・ブランドは1970年にアメリカで誕生したそうですね。

野上部長 はい。ポール・オーファラというアメリカの若者が、大学の構内のコピーセンターに訪れたところ、学生の長蛇の列を見て、これはビジネスになるのではないかと考え、ハンバーガーショップの一角にコピー機を置かせてもらったところ、大繁盛したというのが始まりです。アメリカはキリスト教の文化で、地域の教会でバザーなども頻繁に開催されますから、のぼりなどのニーズもかなりあったと聞いています。地域に根差したキンコーズのコピーショップは、全米に広がっていきました。

――キンコーズ・ジャパン株式会社の設立は199112月と伺っています。

野上部長 翌1992年には名古屋の住宅地である千代ヶ丘に1号店をオープンさせます。なぜ名古屋千代ヶ丘なのかというと、アメリカと同じクルマ社会ですし、学生や住民の多い住宅街に近いということで、キンコーズのビジネスモデルに適した場所だと考えられたからです。

ところが、日本ではバザーなどコミュニティでの用途よりも、ビジネスシーンで活用されることが多いことが分かってきて、徐々に名古屋のオフィス街、そして東京のオフィス街へと進出しました。そういった経緯があって、日本ではビジネス用途で使われることが多いです。(コーヒーショップの)スターバックス様と同様に、職場でも自宅でもない「サード・プレイス」で気軽にプリントできるというところが、当時としては斬新だったと思います。

――現在は33店舗、フランチャイズ店を含めると全国に47店舗あるそうですが、やはりオフィスの方が多いですか。

野上部長 約7割が法人の方です。ただ立地によって異なっていて、(同じ東京でも)大手町や虎ノ門などのオフィス街ではビジネスユーザーが多いですし、新宿や渋谷などでは学生やクリエイターの方が多くご利用していただいています。

――するとキンコーズ・ジャパン一律のサービスもあれば、地域ごとのサービスもあるのですか。

野上部長 その通りです。近年力を入れているのは地域特性を生かしたサービス展開です。例えばウェディングの商材に強い店舗もありますし、ファブリックやトートバックなど個人向けの商材に強い店舗もあります。

ものづくりのコミュニティとして

――私(光山)が学生のころ(1990年代)は大学のコピー機で並んだ記憶がありますけれども、今の学生は論文やポートフォリオ(作品集)以外には、コピー機を使うことは少なくなったと思います。ペーパーレス化の流れも感じますか。

野上部長 われわれもドキュメントはすべてデジタルに置き換わってしまうのではないかと想定していましたが、実際は使い分けで、記憶に残すドキュメントはやはり紙が適していると考えられているお客様が多いです。希少になる代わりに紙の価値は上がると思いますし、なんでも出力するのではなく、最適な方に最適な量を出力する時代になったのかなと思います。それから私たちも驚いているのですが、企業の研修などではやはり紙を配布したいというお客様がまた戻ってきています。

――揺り戻しが来ているということですね。法人の方は、やはりドキュメントが多いのでしょうか。

野上部長 ドキュメントも多いですが、販促系のご注文も多くいただいています。展示会のポスターやパネル、ノベルティの印刷や施工などですね。

Tシャツなどもオンデマンドで製作できる

――クリエイターエコノミー(プロ/アマチュアのクリエイターによる創作活動)や「推し活」ブームの影響は。

手塚氏 キンコーズは以前からクリエイター様のお客様も多いですし、推し活でいいますと、うちわやペンライトなどをオリジナルで作られる方も多いです。「こんなペンライトをキンコーズで作ったよ」とSNSで発信してくださる方もいらっしゃって、一気に拡散したりすることもあります。ドキュメントでいうと、昔からキンコーズでお世話になっている、という方が自費出版をキンコーズでしていただくという事例も多いです。

――実は私もその一人なんです。若いころ物書きを目指していて、エッセイ集をキンコーズで出力して、簡易製本して家族に読んでもらったところ、「自費出版したらどうか」と言ってくれて、出版にこぎつけたことがあります。一般の印刷会社は敷居が高いですが、街中のキンコーズなら入ってみようか、という入門の方も多いと思いますが、いかがでしょうか。

野上部長 ありがとうございます。「相談に応じてくれる」ということもキンコーズの強みです。(色校正で)色味が確認できるとか、ネット通販にはない強みもあります。その一方で、「相談するのは恥ずかしい」「自分で創作に打ち込みたい」というお客様もいらっしゃいます。キンコーズの(相談員もいて、セルフサービスもできるという)ハイブリッドの特長が生かせているのかなと思います。昔からモノづくりが好きな方が来店されますし、実はキンコーズの社員にもモノづくりが好きで入社してくれた人が多いです。

キーホルダーから看板まで幅広いソリューション

――紙以外の印刷も増えていますよね。

手塚氏 そうですね。アクリルキーホルダーなどはクリエイターさんの作品としても、法人のノベルティとしても人気があります。キンコーズはプリントショップというイメージが強いですが、大阪と東京の品川の2か所に生産工場を持っていまして、大型の機械が、中・大ロットの大判ポスターなどを印刷、加工を行っています。

野上部長 2016年にサイン&ディスプレイの専門会社のインターリンクを吸収合併したこともあって、サイン&ディスプレイの施工も得意としています。街のドキュメントからショッピングモールの装飾まで行っているということで、ソリューションの幅が広い会社であると思います。

――プリントビジネスの将来展望についてご意見を。

野上部長 もちろんプリントをやめるということはありませんが、「オンデマンドソリューション」会社としてのこだわりは持っていきたいです。またプリントと一言でいっても、ファブリックであったり、アクリルだったりとさまざまです。キンコーズのショップでは、Tシャツをセルフで製作できる機械などもあります。「体験」と結びつけたソリューションをご提供していきたいと考えています。

当社はゲーム「モンスターハンターNOW」や映画「ガールズバンドクライ」などのIP(知的財産権)とコラボレーションしたりしています。法人に強い(顧客基盤を持つ)当社ならではの企画かと思います。

プリントにこだわらない、ということではありません。価値がある印刷物は残っていくと思います。プリントにプラスオンして、新しいソリューションを加えていきたいと考えています。

キンコーズ・ジャパン本社にて野上朝子部長と手塚郁美シニアスペシャリスト
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