印刷機材商社の一誠社が主催する「2024 ISSEISHA FAIR【reframe】」」が4月5日・6日の両日、香川県高松市のサンメッセ香川で開かれた。5日午前には共進ペイパー&パッケージ(兵庫県神戸市)の鍛治川和広代表取締役社長が登壇、主要顧客を失った自社を立て直した営業マン時代から、デジタル印刷とWebサービスで売上88億円企業(今期100億円見込)まで成長させた現在までを振り返るとともに、M&Aなどさらなる成長戦略を発表した。
自社のピンチをチャンスととらえた営業マン時代
共進ペイパー&パッケージは創業1948年、従業員約300人、売上88億円の紙器・段ボール印刷製造販売会社。1977年に生まれ、2022年に社長に就任した鍛治川和広氏は3代目経営者にあたる。鍛治川氏は入社から現在までの15年を4期に分け、それぞれの時代の取り組みを振り返った。
第1期は「営業マン時代」。大手飲料メーカーから入社した鍛治川氏は周りから「ボンボン」と呼ばれるのを嫌い、自らテレアポを1期で345回行って6社の新規受注を獲得するなど得意の営業力を社内に示すとともに、営業ノウハウをマニュアルや会社案内・営業研修などに落とし込んで社内に浸透させた。主要顧客を失った当時の自社のピンチをむしろ自分にとっての好機ととらえ、新規営業に積極的な企業風土に変えた鍛治川社長は、「自分は営業が得意だったが、後継者の方は自分の得意分野で影響力を示すことが大切なのではないか」と話した。
「ハコプレ事業」で会社をけん引
第2期はオリジナルのパッケージがオンライン上でデザイン・発注できる「ハコプレ事業」への挑戦という「新規事業注力時代」。デジタル化する世界、人口減少への危機もあったが、紙器業界においてインキの量は同じなのに色数が増えるだけでコストアップされる、熟練工の都合に左右されるというプロダクトアウト志向から、お客様が欲しい箱を、欲しい時に、欲しい量だけ、欲しい価格で提供するためのツールとして設備やシステムを導入するマーケットイン志向に変えなければならないという思いから、デジタル印刷を次々に導入、ネット通販「ハコプレ」のユーザーインターフェイス(UI)にも約700万円を投じた。店舗型にも従来のネット通販にもないサービスで、スキルレスでありながらもある程度労働集約型で小さい仕事でもあるため大手企業も参入しないだろうという競合分析も当たり、事業の柱に成長した。大きな転機はB2インクジェット印刷機「JetPress720S」(富士フイルム)の導入で、対応サイズの90%がカバーできるようになった。2019年にはB1インクジェット機「Primefire106」(ハイデルベルグ)を導入、同機の生産中止を受けオフセット印刷機に戻ったのちも、B1デジタル印刷機の導入を視野に入れている。鍛治川氏は以上の経緯を述べたうえで、「デジタル印刷の成功のキーファクターは、極小ロットをいかに継続的に集められるか、そのために一定の品質基準を容認してもらえるかという2点だと思う」と話した。
先代がいかに後継者の「本気」を見守るかが大事
第3期は会社のリ・ブランディングの取り組んだ「事業継承期」、第4期は「現在から今後」。社員の労働時間の3%を能力向上に充てる、経営専門学校で会計やロジカルシンキングの授業を受けてもらう、社員自身も講師となる社内セミナーを開くなどの教育への投資などについて語ったのち、今後の展望として、経営を安定化させるポートフォリオ戦略や積極的なM&A、特色を7色プロセスカラーで代替する脱特色ビジネスなどを挙げた。
最後に事業承継の重要なポイントとして、「プロダクトアウトで成功した経営者は、後継者にも『デジタル印刷機を与えるからなんとかしろ』というスタンスの方も多いですが、後継者本人がいかに本気で事業を取り組むか、そのために先代がいかに見守るかということが大事だと思う。そういう意味でも、私は先代を尊敬しているし、ありがたかったと思う」と述べた。