筆者の印刷業界に対する知見がバランスよくちりばめられている。かくいう私も以前印刷業界に関わったことがある人間だが、「マーケティング支援会社への道のり」「アウトソーシング事業に商機あり」「ワンストップサービスの可能性」と展開する論旨の中に、たしかに生き残りのヒントが散在していることを実務を通して実感してきた。そして筆者はこれらのヒントを、「アンゾフの成長マトリクス」というツールを用いて定義しなおしているところが拍手喝采である。簡単にいうと、表面的には統計上も実際のビジネスでも追い詰められたとおもわれる印刷会社も、細い手綱をたどれば生き残っていけるはずだという筆者のメッセージは正しい。ただ、本書の最後に登場する「紙の本へのノスタルジー」に安住するプレーヤーは、即刻退場を強いられる厳しい生存競争でもある。やるかやらないか、選ぶのは読者の自由であるが、やると決めたら本書の最後に登場する「人材戦略」を丁寧に実行しながら、この道しか生きる道はないと覚悟して進んでいくしかない。(風林火山)