クロカミスクリーン印刷株式会社(佐賀県佐賀市)は、ビンの曲面印刷から点字印刷まで、スクリーン印刷ならではの多彩な仕事をこなしている。黒髪清尊社長は「抽象的な言葉ではなく、実際の製品でスクリーン印刷の可能性を社会に示していけたら」と話している。
数々のアイデア商品を提案
クロカミスクリーン印刷は来年創業50周年を迎えるスクリーン印刷会社。黒髪社長は1971年生まれの2代目で、熊本の大学を卒業後、関東のスクリーン印刷会社である新興グランド社で修業したのち家業に入った。2006年の社長就任時には会社を法人化している。
新興グランド社とは今も親交が厚く、点字印刷を応用した、ビーズをデコレーションしたかのような加飾技術「ラインストーン印刷」や、通電性のあるインキを下地に引くことで、モバイル電源1つでポスターなどの印刷物を光らせることができるライトパネル「ハレルヤ」などのアイデア商品の九州代理店も務めている。
ビンへのダイレクトプリントで貴重な存在に
クロカミスクリーン印刷は、佐賀県でも数社しかないスクリーン印刷会社であり、曲面印刷機やPAD印刷機などを保有しさまざまなメディアへの印刷をこなすことで顧客の信頼を得ている。
「スクリーン印刷の可能性を直接社会に提案していこう」をテーマに掲げる同社にとって、社会的役割の大きい点字印刷は「ど真ん中」(黒髪社長)の仕事である。点字印刷をはじめとした厚盛印刷を支給された印刷物から追い刷りする仕事も多い。
曲面印刷も強み。とりわけ専業会社以外で、ビンへのダイレクトプリントができる設備を有している会社は九州でも数少ない。同社では有名酒造会社からビンのダイレクトプリントを請けている。スクリーン印刷だと小ロットと思いがちであるが、数千のロットもこなす。そのほかTシャツなどアパレルから壁紙やトラックなどへのダイレクトプリントも受注している。ここ数年のトレンドであるアクリルへのプリントも増えており、フォトスタンドやキーホルダーなどアクリルグッズの問い合わせも多い。
いかに難しい仕事をこなすか
点字印刷はデジタル加飾機、Tシャツはインクジェットプリンター、大型トラックはラッピングといったように、スクリーン印刷の競合が台頭している。同社も大判インクジェットプリンターを導入しているが、大手ネット通販によるDTF(ダイレクト・トゥ・フィルム)プリンターによる大量生産もある。
佐賀県印刷工業組合の専務理事も務める黒髪社長は「大手印刷会社はわれわれとは別ジャンル。同じ土俵で戦わないことが重要です。難しい仕事、細かい仕事をいかにこなしていくか。そのためには印刷業界のネットワークが大切だと思います。設備をあれもこれもと購入するよりも、同業のみなさまと協力しながらものづくりができれば、まだまだ面白い業界なのではないでしょうか」と話している。
スクリーン印刷会社は数こそ減少しているものの、独自の戦略で売上を伸ばしている会社もある。黒髪社長は「お客様に尋ねられたときに『できません』という返答はしたくありません。特色のある同業者様とのつながりを大事にしたい。また、九州圏内に当社がなくてはならないと思っていただけるような会社をめざしたい」と意気込みを述べている。