2024年に設立50周年を迎えた協業組合ユニカラー(鹿児島県日置市)。今回は2019年に竣工した同社本社工場を見学し、地方印刷工場のあるべき姿を考察した。
特殊印刷からフォーム印刷まで手掛ける最新プラント
鹿児島中央駅から鹿児島本線の上り列車に揺れること17分、緑に囲まれた隘路が急に開け、伊集院駅に着く。そこから高台に向かい、戦国武将・島津義弘ゆかりの徳重神社を抜けると、敷地面積9400㎡もの広大な敷地にシックで洗練された1階建ての建物が現れる。南九州自動車道伊集院ICからも車で6分のこの場所が、協業組合ユニカラーが2019年に構えた本社工場である。
協業組合ユニカラーは1974年、鹿児島県内の印刷会社5社が集まり設立、それぞれの特色を生かした経緯から、様々な強みを持つ総合印刷会社として発展を遂げた。九州印刷情報産業展にも毎年出展、竹林面積日本一の鹿児島県の特色を生かした竹紙印刷やUV印刷機を活用したレンチキュラー印刷などをPRしているため、特殊印刷に特化した印刷会社と思われる向きもあるが、一般商業印刷から紙器、フォーム印刷まで一手に手掛けている。今回は岩重昌勝理事長みずから弊紙記者のために案内していただいた。
徹底した衛生管理とスムーズな動線
本社工場を一覧してまず目に引くのは、広大な敷地を生かした動線だ。1階建てのスぺ-スに、営業・制作・生産・検品・出荷の各フロアがゆったりと配置されているために、76人の従業員もストレスなく意志疎通や作業連携でき、作業にも集中できそうだ。
工場エリアは外部よりも気圧を上げることにより、粉塵などをシャットアウトしている。
衛生キャップをかぶり、入念にエアシャワーを浴びて、工場内に入る。まず視野に入るのは、最新鋭を含む2台の菊全6色機である。レンチキュラーなど特殊印刷のみならず、厚さ1㎜のコートボールなどにも対応できるため、大手食品メーカーのパッケージを一手に引き受けるなど、仕事の幅を広げている。目を引いたのはプレートセッターが印刷機のフィーダー近くの同じスペースに設置されていること。UV印刷機であるためパウダーレスのうえ、紙粉やホコリ対策が万全だからこそ、プレートセッターを別部屋に囲まなくても設置でき、効率的なオペレーションができる。むしろUV機ではない油性2色機、1色機を別部屋の囲むという発想である。
RGB印刷も可能な液体トナーデジタル印刷機などを擁す
デジタル印刷機のルームには、液体トナー機の「Indigo7k」が稼働していた。特殊な原反や20以上もの特殊インキにも対応している。最近ニーズが高まっているRGB印刷が行えるのも、同機があるからだ。なお粉体トナー機も極小ロットやナンバリングが必要なカラー印刷などでかなり活躍しているそうだ。
紙器にも強い同社は特色の仕事も多く、デジタルでカラーコントロールできる調色システムを導入していた。フォーム印刷機も2台活躍している。
竹林面積1位の鹿児島県の特色を生かし、竹素材の用紙やインキを使ったバンブー印刷を行い、ブランディングやSDG's対策にも役立てている。放置竹林は土砂災害や獣害にも繋がりやすいことから、同社が洋紙・インキメーカーと共同で取り組んだ成果だ。有名コーヒーチェーンからヒントを得、竹紙ストローも開発したところ、地元テレビ局などでも紹介された。
生き残るプラントとは
以上、岩重理事長に工場を案内していただいた。コロナ禍直前の2019年に工場を竣工したが、岩重理事長は「旧工場は手狭で設備も老朽化しており、コロナ禍で設備投資を躊躇していたら、旧態依然とした印刷会社として埋没していたかもしれない。昨今の建設費の高騰などを見ても、あのタイミングで竣工してよかったと思っている」と話す。
岩重理事長は2035年には印刷会社(全日本印刷工業組合連合会傘下)は現在の4000社から半減すると見込んでいる。好むも好まざるも、後継者不足も含め、印刷工場は鹿児島県で3~5工場しかなくなるかもしれない。そのときに生き残るプラントは、同社のような薄紙から厚紙まで、紙器からフォーム印刷まで、最新の生産体制でこなす総合印刷工場なのではないかと、記者は感じた。