【2025九州印刷情報産業展レポート】デジタル印刷の実用機が勢ぞろい、DTFプリンターも数社が出展

2025九州印刷情報産業展(九州サイン&デザインディスプレイショウ併催)が53031日の両日、福岡国際センターで開かれた。諸経費高騰にともなう小間料改定にも関わらず会場は101社、273小間を数え盛況となった。地域の商談会に相応しく小回りの利くデジタル印刷機、加工機の数々が出展され、話題のDTFプリンターも数社がデモンストレーションするなど、実用性とトレンドが反映された展示会となった。

電子写真方式デジタル機の改良すすむ

世界的見本市のdrupaなどではB2B1のワンパスインクジェット印刷機がラインアップされるが、九州地方を代表する商談会である同展では、引き続き電子写真方式(トナー方式)のデジタル印刷機が主流である。

コニカミノルタは毎分140枚のフラッグシップ機を出展

コニカミノルタジャパン㈱は今春発売したばかりの粉体トナー機のフラッグシップ「AccurioPressC14010S」を実機出展した。毎分A4140枚の生産性に加え、色管理・表裏見当調整・紙面検査装置を標準装備する。同社初の白トナー対応で、クリアメディアなどでも白打ちすることで高い表現力が可能である。

キヤノンマーケティングジャパン㈱はA4毎分100枚の「imagePRESS V1000」を実機出展した。注目は参考出品ながらエア機構による大容量でも安定したフィードと、万が一重送した場合でもすばやく排紙する機構である。会場では本体内の冷却ユニットで用紙の反りや貼り付きを抑制することで後加工や梱包作業も含めた安定操業が可能な点も強調された。丸石(東京)やソウブン・ドットコム(同)、高速オフセット(大阪市)などのユーザー事例も紹介された。

リコージャパン㈱は「RICOH Pro C9500」(毎分135枚)と「RICOH Pro C7500」(毎分85枚)の2台を展示していたが、とくに最大8色に対応する「RICOH Pro C7500」の表現力に注目が集まった。白打ちにより遮へい性が高まり、色紙やメタリック調の用紙にもワンパスで鮮やかに印刷できるうえに、金・銀、抗菌クリアトナーなどにも対応する。コーポレートカラーなどの特色も同社が対応する。会場で展示されたさまざまなメディアの印刷物が目を引いた。

SCREENのトナーデジタルラベル印刷機

 

SCREEN GPジャパンは電子写真方式のラベル印刷機「BIZPRESS 13R」を実機展示していた。「畳1枚に収まる圧倒的なコンパクトさ」がキャッチコピーで、毎分7・26mmの生産性のためエントリーやサブ機としての用途が考えられる。

電子写真方式のデジタル印刷機が全面に出されるなかで、独自のポジションを確立しているのが理想科学工業㈱である。同社はロングセラー孔版印刷機リソグラフの最新鋭機のほか、A4毎分165枚のインクジェット印刷機「ORPHIS GL 9730 PREMIUM」を出展した。会場ではハイボリュームの用途のほか、薄紙の請求書などの用紙適性も強調された。

後加工でもデジタル化

後加工機で目立ったのは、㈱光文堂のオンデマンド段ボール加工機「KBD AUTO SLOTTER」である。100種類以上のテンプレートのなかから1箱ごとに異なるサイズの段ボール台紙が断裁されるさまは驚きだ。通販における商品と箱とのミスマッチも解消され、物流効率も向上する。

光文堂のオンデマンド段ボール加工機「KBD AUTO SLOTTER」

㈱ムサシ福岡支店はデジタルダイカッター「SC6500」を実演していた。POD向けのコンパクト仕様で、ダイカットやクリースが1台でできる。

なおオフセット印刷機メーカーからはリョービMHIグラフィクテクノロジーが、電動アシスト台車とアシストスーツを提案していた。電動アシスト台車は500㎏まで積載可能で、非力な私でも軽々と推進、転回できた。アシストスーツは電力と非電力の両方あり、腰痛の防止にフォーカスした非電力のアシストスーツはリーズナブルな価格設定だ。説明員は「高齢のオペレーターが腰を痛めたとたんに工場の操業が停止するような体制ではなく、アシストスーツで姿勢を正して腰痛を防止する体制の方がコストはかからない。ぜひ印刷業界でも導入を」とPRしていた。

メディアを選ばないDTFプリンター

ワンパス方式のインクジェット印刷機はまだまだ主流ではないが、ヘッドを往復させてプリントするシャトル方式のインクジェットプリンターは、いうまでもなくポスターや横断幕などの大判メディアではすでに主流である。今回もエプソン販売㈱や㈱ミマキエンジニアリング福岡営業所、ローランドディー.ジー㈱などが6m幅級のインクジェットプリンターを出展していた。

大判インクジェット機も軒並み出展

その中で、新しいトレンドを感じさせたのがDTF(direct to Film)プリンターである。ステッカーシートにプリントして転写する方式は今までもあったが、複雑な工程を必要とせず、シール感覚で転写でき、カス取りも必要のないDTFプリンターは急速に導入が進んでいる。フィルムを転写するため、Tシャツからノベルティグッズまで幅広く利用できる。

ウェア用マークの資機材メーカーの㈱アステムは「ARTJETプリンターAJ0100」とシェイクパウダードライヤーを実演した。アパレルグッズのメーカーでもあり機械ベンダーでもある㈱イメージ・マジックもUV照射のDTFプリンターの300ミリ幅モデル「NC-UVDTF30」を展示していた。ボトル・ランチボックス・コンパクトミラー・ラバーケース・ビニール傘などメディアを選ばない。

「ニッチ市場の全国展開」に活路

印刷会社からも16社前後の出展があった。印刷ネット通販では大手のプリントネット㈱のほか、松浦印刷から事業譲渡を受けた音成印刷㈱が「ネット印刷ナウプリ」をPR、両端ジャバラ折りなどの特殊加工などを提案していた。㈱メイセイプリントはDMで培った圧着技術をクジなどへ展開していた。協同組合ユニカラーは①RGB印刷②Gフルート印刷③レンチキュラー印刷――を、鹿島印刷㈱はUVフラットベッドプリンターとカッティングプロッターを駆使したブランド「Deaer」を、初出展となった久野印刷㈱は余在庫から生まれた紙雑貨ブランド「イーモンMikke」をそれぞれ紹介していた。

アクリルキーホルダーから大判POPまで(鹿島印刷)

とくに目を引いたのは、スクリーン印刷のクロカミスクリーン印刷㈱、荷札の㈱第一印刷、トムソン機点字印刷などで特許を持つ㈲ハラダ印刷、手動活版印刷を伝承する㈲文林堂など、アナログのニッチ市場をターゲットにした印刷会社である。例えば㈱第一印刷は「荷札屋本舗」のブランド名で全国2400社の同業者に納品している。デジタル化が進む中で、あえてニッチ市場を全国展開する戦略には可能性を感じた。

テーマは「多メディア対応」

今回の展示会を通じて感じたテーマは「多メディア対応」である。主に紙をメディアとする粉体トナーデジタル印刷機メーカーにおいても、白打ちして遮蔽したり、フィルム素材への対応力を強化したりして、単なる紙メディアの印刷機から脱却しようとしている。インクジェット機メーカーにおいても、UVプリンターやDTFプリンターによって、スマホケースやアクリルキーホルダーといったグッズ市場への参入を促している。印刷通販大手のプリントネット㈱ですらアパレル印刷をPRしていたし、圧着DMに強いメイセイプリントですらDM以外の圧着メディアを提案していた。

オフセット印刷のイースト朝日もノベルティを中心に提案

単なるチラシ・DM・カタログでは大手にはかなわない。明らかに紙メディアからグッズへの移行がトレンドとしてみられたし、今後も「多メディア対応」が印刷業界の活路になるだろう。

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