
TAISEI株式会社(大阪府東大阪市)は紙器と紙管を得意とする一般的なパッケージメーカーだったが、化粧品メーカーを顧客としてからは審美眼を求められる高付加価値製品を次々と生み出し、売上は2002年の12億円台から2026年は30億円、利益率10%超を達成する見込みとなっている。細水雄一郎社長に、同社の高付加価値戦略について聞いた。
「面白さ」こそユニーク・ポジション
――中小企業庁等が推進している「100億宣言」を取得されました。
細水社長 自社を売上100億円企業にしたいというのは小さいころからの夢だったので、「100億宣言」のプロジェクトができたときは、「自分のためにあるようなプロジェクトだ」と考え、すぐに申請し、取得しました。でも、みなさんから取り上げていただくのは嬉しいのですが、当社
――というのは。
細水社長 あまり変化のない、利益率の低いメーカーとして売上100億円を達成しても面白みがないと思っています。高付加価値のわくわくするような製品・サービスを生み出すことで高利益率を
――御社本社のショールームを拝見しましたが、お菓子や化粧品の箱はもちろん、開けると「ポン」という縁起のいい音が鳴る筒型のポチ袋「POCHI-PON」をヒット商品にしたり、水を注ぐと加湿器になるペーパークラフトを印刷適性のある紙から開発したり、大手テーマパークの写真ホルダーを製作したり、ブリスターパックを紙製に代えた脱プラスチックパッケージを提案されたり、精巧なレーザー加工が施された箱を最初に世に出されたりと、御社のユニーク・ポジションが伝わってきます。
細水社長 当社は紙管で相応のシェアを持っており、お菓子や化粧品の箱の大量生産も行っていますし、そういった普通の(コモディティの)箱の市場をさらに拡大することもできるのですけれども、それだけでは従来の価格競争に陥ってしまいます。例えば毎年クリスマスシーズンに受注するアドベントカレンダーの箱のように、毎年企画を変える、趣向をこらす。そのことによって高付加価値のお仕事を請けられますし、結果的に普通の箱も値崩れすることなく受注することができます。紙の可能性を追求する。一言でいうと高付加価値戦略です。

ゼロから化粧品業界を開拓し、厳しい品質基準に応える
――御社は化粧品メーカーを主な顧客とされていると伺っています。もともと高付加価値の仕事が強かったのですか。
細水社長 いえ、私が入社する前は化粧品メーカーとはほぼお付き合いはありませんでした。現在は売上の3分の2は化粧品メーカーからのお仕事です。今では化粧品業界ではTAISEIを知らない方はいらっしゃらないくらいの知名度を持っていると自負しています。
――すると細水社長のご努力で、化粧品業界を新規開拓されたのですか。
細水社長 もちろん私1人の力ではありません。ただ、私が東京支社で営業をしていたころに大手化粧品メーカーから新規に受注を獲得しました。大手から継続してご信頼をいただくと、他のメーカー様からも発注をいただきやすくなる状況が生まれたので、化粧品業界からの仕事は増えていきました。
――化粧品の仕事は品質やセンスの要求水準が高いです。
細水社長 大手化粧品メーカーから新規受注を獲得した時も、先代はとても喜んでいて、ただ化粧品業界に参入できるのは夢を見ているようだと言っていました。工場メンバーも、自分たちの力量が試されるため不安を抱えながらも前向きに取り組んでくれました。もともと菓子箱のメーカーとして紙管は強かったのですが、それにデザイン力とレーザー加工の技術を組み合わせて、お客様のご要望にお応えしているうちに、それ(品質要求)が当たり前になっていったという経緯です。
また、単に箱を作るだけではなく、例えばステーショナリーや雑貨、紙製のコンパクトといった直接製品も作れますよといった商材の広さも強みにしています。「TAISEIを(仕入れ先に)持っていたらお得ですよ」というのが、当社の立ち位置といえると思います。保守的な紙器業界のなかで、いろいろなチャレンジをするTAISEIは、クライアントにとっても本当に便利な存在だと思います。

――デザイン力も大きな武器だと思うのですが。
細水社長 はい。光山さんの本にも書かれていましたが、「審美眼」ですね。センスが大切になってきます。当社の営業、デザイナー、設計メンバーは「オールスター」だと思っています。紙製品が好きな人材は日本には一定数いますが、当社はその「好き」を最大限発揮できる会社だと思っています。採用に苦労することはほとんどありません。
利益重視の企業へ転換
――「100億円企業を目指したい」という夢から利益重視に転換されたきっかけはあるのですか。
細水社長 それはもう、コロナショックです。リーマンショックでも東日本大震災でも売上が下がらなかった当社が、2020年5月には単月での売上が(前年同期比の)半分になりました。それまで作っていた中期経営計画をすべて廃棄し、ゴールデンウィーク中に一から作り直したことを今でも鮮明に覚えています。売上が3割減っても赤字にはならない企業になるため、生産現場の損益見える化を進めたり、改善点をどんどん洗い出していきました。そうすると売上は1割減で済み利益も積みあがったのです。
それから現在まで高収益体質に変わっていきました。その流れを大切にしていきたいですし、100億円企業は目標ですけれども、それに引っ張られて大切なもの(財務体質や理念)を見失ってはいけないと思います。実質無借金経営も続けていきたいです。
――最後に今後の展望を。
細水社長 パッケージ、プロダクト、プロモーション、デザイン、マテリアル、ブランドの6つのポートフォリオを掛け合わせて、シナジーを生み出そうと思っています。そしてチャレンジすることを止めてはいけないと思います。おこがましいですが、紙器業界は商業印刷業界ほどには厳しくなかったから変わらずにいても済むことができた。しかしこれから変わっていくためには、武器がなければならないと思います。当社は20数年かけて武器をたくさん作ってきましたから、武器を駆使して成長していきたい。紙器業界に対しては、それぞれ通る道は違うけれども、成功事例の一つになっていきたい。
売上に関しては、社会的にいい影響を与えるためにはやはり成長が必要だと思います。当社は約半分の仕事はネットワーク先と作業交流(外注)しているので、売上を上げることで業界のすそ野を広げる一助になれればと考えています。















