
その圧倒的な耐久性・耐水性から選挙ポスターからラベル、ドア広告まで幅広く使われ、一般名詞となっているともいえる合成紙「ユポ」。開発・製造を手がける株式会社ユポ・コーポレーションは2026年7月1日、「株式会社ユポ」と社名変更した。合成紙国内シェアナンバーワンで、グローバルニッチトップ企業でもある同社がなぜCI変更したのか。7月1日に東京・神田駿河台の同社本社で行われたリブランディング発表会から、同社の歴史と展望を探った。
社会課題から生まれたユポ
合成紙ユポという特殊素材でグローバルニッチの地位を確立し、売上高連結291億円(2025年度)、従業員連結572人を擁する素材メーカーとなったユポ。しかし同社の歴史は意外にも「苦悩の歴史」(内藤勝弘社長)であった。
高度経済成長期、紙需要が急増する中、森林資源の枯渇する不安から、当時1バレル1.8ドル程度だった石油を由来とする代替素材を作ろうという機運が高まった。1969年5月10日、石油化学系合成紙の企業化を目的に、王子製紙と三菱油化の折半出資により株式会社油化合成紙研究所が設立される。これがユポの前身である。なお合成紙「YUPO」は三菱油化の「YU」と王子製紙の「O」、ペーパー「P」から名付けられた。
ところが1973年と1979年のオイルショックにより、フィルム合成紙への代替の機運は一気にしぼむ。数多くの企業が市場から撤退した。
しかし同社は素材の可能性を信じ、用途開発を模索し続けた。「赤字を続けること15年、自分たちの居場所を探し求め、事業を存続させるために、価値をどこかに提供できないかと模索してきた」(内藤社長)。ようやくその耐久性・耐水性などの特長が日本の市場に、そして世界の市場に認められ始める。用途は表示ラベル、インモールドラベル、屋外広告、サクションタック、変わったところでは植物工場にも使われるようになった。

このようにユポは社会課題から生まれ、用途を顧客とともに開発しつづけてきた。しかし創業から半世紀以上たち、社員の現状維持意識が強くなった。海外市場はインモールドラベルを中心に伸びているものの、国内出荷額はほぼ横ばいである。危機意識をもう一度高め、ユポの可能性をさらに広げることを目的に今回、経営戦略を含めたリブランディングを行うことになった。
オープンイノベーションでさらなる用途開発へ
社名は株式会社ユポ・コーポレーションから「株式会社ユポ」へ、ブランドロゴは従来のオレンジを基調に、ユポ紙を現した白色四角形を中心に置いたデザインへ、ブランドコンセプトは「Value Co-Creator」へ変更した。だが今回のリブランディング宣言の主眼は、「技術ノウハウを公開してお客様と共創するオープンなものづくりへ」、つまり「オープンイノベーション」への呼びかけだろう。同社の強みは生産からアフターサービス、加工品の提供まで、ワンストップで行える点である。その強みを生かして、技術ノウハウを開示して、顧客と価値を共創することが目的なのである。

国内外で多数の関連特許を取得するユポだが、ここでその独自製法を紹介する。主原料はポリプロピレンと炭酸カルシウムで、これをペレットで造粒する。そして二軸延伸で縦方向・横方向に伸ばす、そして塗布剤で表面処理を行う。
主な特長は合成紙ならではの耐水性や耐久性だけではない。延伸工程で炭酸カルシウムを核に無数のミクロボイド(微細な空孔)が発生するため、光が乱反射し、高い白色度をもたらし、軽量化にも寄与する。
また独自の塗布剤による表面処理により、印刷適性、さらに低発塵や薬品耐性などさまざまな機能を付与することができる。このように様々なカスタマイズができることが、同社が「クリエイティブ素材」と呼ぶゆえんだ。

例えば剝がそうとするとラベル表面の層だけ剥がれ、裏面が被着体に残るため偽造防止につながる「イージーセパレートユポ」、片面に吸水性がありさまざまなタイプの接着剤が使える「アクアユポ」、吸着層によって、平滑な面に糊残りせず貼って剥がせる「サクションタックユポ」、片面をアルミ蒸着でメタリック調に仕上げた「メタリックユポ」といった具合だ。廃棄されたホタテ貝殻を含有させた「ホタテ貝殻含有シート」といったサステナブル商材や、防滑性を持たせて物流の荷崩れを防ぐ「ユポ防滑タイプ」といったソリューション商材などさまざまな素材を開発している。
カスタマイズによる無限の可能性
以上、ユポの歴史と展望を見てきた。ワンストップで様々なカスタマイズができる合成紙メーカーだからこそ、今回同社が掲げる「Value Co-Creator」、いわゆる顧客との価値共創が可能になることがわかった。また「危機の歴史」を潜り抜けてきた同社のDNAを次世代に引き継ぎたいという思いもわかった。
一見、同社はユポ紙という「一本足打法」のようにみえる。だが、ユポ紙には多層構造・独自表面処理によるさまざまな用途開発が行える強みがある。そういった「クリエイティブ素材」の用途開発を顧客とともに行うことで、素材メーカーとしての可能性は無限に広がっていくと感じた。














