【印刷業界の「いま」がわかる1冊】『印刷業界レポート2027』著者インタビュー

『印刷業界レポート2027~再起動せよ、印刷業界~』が2026年11月1日、みつや出版事業部から刊行される。『印刷会社の生存戦略』など3冊の本を既刊している著者が、なぜこの本を書いたのか、著者の光山忠良氏に聞いた。

シンクタンクへの疑問

――光山さんの新著『印刷業界レポート2027~再起動せよ、印刷業界~』が11月1日発売されます。

光山 夏の間はずっと事務所でこの本を書いていました。でも出来上がってみると、「ああ、僕が書きたかったのはこんな本だったんだな」と感慨深く思いました。

 

――光山さんは『印刷会社の生存戦略』をはじめ3冊の印刷業界の本を出していますが、特に思い入れのある本なのですね。なぜですか。

光山 一つは、印刷業界全体を俯瞰し、経営の指針となるような本を書きたかったからです。2つ目は、印刷業界のシンクタンクなどが発行してきた白書や報告書に対するもどかしさからです。私は日本印刷新聞社で『日本印刷年鑑』を、日本印刷技術協会で『印刷白書』を編集として携わらせていただきましたが、大いに不満があったのです。

――穏やかではないですね。『印刷白書』は印刷業界唯一の白書として長年発行されていますよ。

光山 確かに長年にわたって編集されてきた担当者の方には頭が下がる思いです。ただ、印刷業界のことをほとんどご存じない。オフ輪のA系とB系の違いも分からないままにオフ輪の仕事があふれた、足りないと評価したり、インクジェットと粉体トナーの違いも分からないままに「これからはデジタル印刷機の時代だ」と断定したり、根拠のない係数をかけて印刷通販の市場推移予測を立てたり…

――まあまあ、でも統計も充実していますし。

光山 統計ならば日本印刷産業連合会の「印刷産業Annually Report」を見ればいいのです、無料でダウンロードできますし、社内で共有すればいい。でも重要なのはデータから何を読み取るかです。

例えば定番の「電通 日本の広告費」ですが、これは広告枠の話であって、通販カタログも、ダイレクトメールの制作・印刷代も数字に入っていない。それなのにこの数字を見て「ネット広告が5割を超えた」とか、逆に「DMは印刷代を含めれば第3のメディアだ」と主張するのはおかしいのです。

印刷の輸出入の統計も毎年出ていますが、印刷市場全体の1%にすぎない輸出入の内訳を長々と紹介するよりも、なぜ印刷業界の輸出入は1%に過ぎないのか、海外の印刷業界はどうなのか、輸入品浸透率99%の繊維業界と比べて業界構造はどうなのか、ということを論じなければならないと思います。

百貨店業界と印刷業界の市場推移が似ているといってデータをポンと出して、「データが語らしむ」と突き放すのではなく、なぜ百貨店業界と近似しているのかまで踏み込まないと、統計の意味はないと思います。

御社の経営会議で使ってほしい 

――印刷白書批判はわかりました。印刷業界レポートの内容について。

光山 印刷業界ニュースサイト「全国印刷新聞」を主宰して3年、全国を取材させていただいて得られた気づきが詰まったレポートだと自負しています。と、同時に、印刷業界が黙して語らない真実にも触れています。例えば大手印刷機メーカーがはっきりと、中期的にはエンドユーザーを食品業界/医薬品業界にシフトしていくと述べています。堅調な市場といわれるパッケージ印刷市場にも、内製化の波が訪れるかもしれないということです。大手製紙メーカーもグラフィック用紙を5年間で3割以上減産します。これはあらゆる市場予測よりも、当事者としての「リアルな予測」だと思います。

一方、TOPPANなど大手が情報系印刷の構造改革を行っており、こちらも印刷設備を削減します。中小・中堅印刷において、これはビジネスチャンスなのか、はたまた市場縮小のシグナルなのか、見極めなくてはいけません。

――確かにそういった経営環境をご存じない経営者もたくさんいらっしゃるかもしれませんね。

光山 印刷経営者のインタビューを200社以上してきて、すばらしい肌感覚の持ち主の方にも出会いましたし、情報通の方にも出会いました。もちろん聡明でマネジメントに長けた方もたくさんいらっしゃいます。そういった方にも、経営環境を客観的に知り、経営戦略を計るうえでの根拠にしていただきたい。

――光山さん独自のオピニオンもふんだんに入っていると思いますが。

光山 そうですね。メーカーや団体に忖度ない意見を書かせてもらっています。私の主張も一つの角度として見て、経営判断していただければと思います。

――では、読者の方にメッセージを。

光山 販促チラシも作ったのですが、デザイナーさんが「御社の経営会議に」というコピーを書いてくれてはっとしました。経営会議を行う上で、机に1冊置いて開いてくれれば、著者としてはこれほどうれしいことはないです。PR記事一切なし、印刷経営の参考に資する資料とするために、精一杯書きました。6000円に値する労力をかけています。売れればそれを原資に、また全国を取材して、皆様にフィードバックさせていただきます。よろしくお願いいたします。

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