【独自取材】KYORITSU、「圧倒的製造キャパシティ」でユニークポジションを確立
景山豊社長

大ロットを得意とするオフセット輪転印刷機(オフ輪)。かつて日本は「オフ輪王国」といわれ、2000年には大日本印刷・TOPPAN・共同印刷の大手3社を除いても1400台以上設置されていた。しかし近年は印刷物の小ロット化、そして何よりも新聞折込チラシの需要減によって激減、近年は700台程度と半減している。オフ輪の老朽化を機に撤退する中小・中堅印刷会社だけでなく、大手印刷会社も工場を集約、設備を削減するなどしている。

その中で、あえてオフ輪を増強し、「他社の追随を許さない圧倒的製造キャパシティ」を武器に躍進しているのが、株式会社KYORITSU(本社=東京都板橋区、景山豊社長)グループだ。その中核を担うのが、共立印刷株式会社である。埼玉県本庄市にある計3万坪の印刷工場にオフ輪27台が稼働し、数千万部の通販カタログの仕事なども多数こなす。コロナ禍の苦難を乗り越え、近年は流通業界・通販業界などの名だたるナショナルクライアントからの信頼を得て再成長、20263月期決算はデジタル事業などとのシナジーもあり、グループ連結で売上高4292000万円(前年同期比 6.4%増)、営業利益14500万円(12.5%増)の増収増益を達成している。

大ロットの通販カタログで再成長

オフ輪業界が低迷を続ける中、同社が再成長している理由は主に3つある。

1つはカタログ生産への注力だ。2000年前後に折込チラシの需要がピークに達したころ、多くの印刷会社はチラシを専門にするB判オフ輪を増強した。しかし創業者・野田勝憲名誉会長は「これからの印刷会社は、製本・後加工も担わなければならない」と決断、同社はカタログ・パンフレットを専門とするA判オフ輪を増強し、製本ラインも拡充させた。現在オフ輪27台のうち18台がA判オフ輪で、1800ページ建てもこなす製本設備(中綴じ22台・無線綴じ5台)もある。関東圏にこれほどのカタログ・パンフレット生産能力を持つ印刷会社はほとんどなく、顧客からの一大ロット案件、例えば数千万部規模の印刷・製本需要に応える製造体制を整え、安定した供給を実現している。

国内最大規模の印刷拠点を擁する(KYORITSU「事業計画」より)
創業以来の品質へのこだわり

2つ目は、生産拠点の集中である。3万坪の印刷工場、2万坪の製本工場・物流拠点を、埼玉県本庄市周辺に集中させている点だ。このためスケールメリットはもちろん、仕掛品を移動させる物流コスト(横持ち)もかからず、外注費を抑えることもできる。東京・板橋の本社との意思疎通も迅速で、品質管理も一元化しやすい。なおBCP(災害時等の事業継続計画)の観点では、あえて同一設備を第一工場に集約させず、第二工場にも分散させるなどの対策を取っている。

3つ目は何といっても創業以来の品質へのこだわりである。例えば同社では2003年以降、全部門全社員で品質向上を目指す「品質保証プロジェクト」を継続して進めているが、202510月にはさらなる品質強化のため品質保証本部を立ち上げ、徹底した顧客視点をベースに製販が一体となって高品質を追求している。通販カタログ、特にアパレルものは、色味の違いなどのクレームが出ることが一般には多いが、5Sを含む徹底的な品質管理で消費者からのクレームを防いでいる。

印刷業界内では多品種小ロットのトレンドが強調され、大ロットはばらまきと敬遠されることも多い。しかし景山社長は「多数の会員やファンを持つ有力企業様は、確実に消費者にリーチし、ウェブにも誘導してくれる大ロットの紙媒体を再評価されている。大手印刷会社は通販カタログなどのコモディティ印刷から高機能商材へのシフトしている。大ロットカタログ製造では他社の追従をゆるさない存在でありたい」と話す。

オフ輪とデジタル印刷で「マス・カスタマイゼーション」を実現

実はオフ輪だけが同社の強みではない。1部からコンテンツをカスタマイズできる高速デジタル印刷機も3台擁し、きめ細やかなワン・トゥ・ワンマーケティングも請け負っているのだ。顧客から預かった購買履歴をもとに、一人ひとり異なった商品をレコメンドするDM、いわゆる「コンテンツ・バリアブル」を得意としている。すでに大手通販会社からの実績があるが、「購買履歴のビッグデータをまだ活用されていない企業様からデータをお預かりして、販促活動そのものを担っていきたい」と景山社長は意気込みを語る。顧客データ管理からバリアブル印刷、宛名印字、封入・封かん、発送までをワンストップを行える同社ならではの提案だ。

オフ輪による大ロット印刷とデジタル印刷によるコンテンツ・バリアブルを組み合わせた提案もできる。例えば表紙とレコメンドページのみをパーソナライズしながら、主要ページはオフ輪で印刷してもよい。マスを対象としながら消費者ごとにカスタマイズする「マス・カスタマイゼーション」の提案ができるのだ。

グループの力を結集し「全方位型販促ソリューションを確立」(KYORITSU「事業計画」より)

今後の課題は、Web制作/マーケティングのMC、総合広告代理業の東京アド、映像制作のバッハベルク、商業印刷の共立印刷といったグループ各社のシナジーを強化することだ。景山社長は「グループの力を結集し、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌、Web、カタログ/チラシ、DMの全方位型販促ソリューションを確立することで、お客様の売上を最大化できる。販促そのものを任せていただき、モノではなく費用対効果(ROI)をご提供したい」と話している。

もちろん主力のオフ輪の生産効率向上にも引き続き注力していく。「例えば印刷部門と製本・後加工部門を多能工し、繁閑を問わず人員を最適化する、減価償却後も利益を出せるようにメンテナンスを強化する、AIを活用してミスロスを防ぐなど、あらゆる角度からアイデアを出し、生産効率を追求したい」

今後もA判オフ輪を1台増強するなど「他社の追従を許さない圧倒的生産キャパシティ」を追求するKYORITSUグループ。景山社長も「紙の力を信じている」と力を込めている。

 

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