
国際包装展「TOKYOPACK2026」(公益社団法人日本包装技術協会主催)が2026年10月14日から16日まで、東京ビッグサイトで開催された。セミナーも展示ブースも「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)がメインテーマとなり、リサイクル可能な包装材の再設計や代替素材の開発、脱墨などの再生技術などが競って提案された。ナフサ・ショックを機に資源安全保障について考える場ともなった。3日間をレポートする。
3RからCEへ
初日(2026年10月14日)の経済産業省による基調講演「資源制約・環境規制に対応したサーキュラーエコノミー実現に向けた取組」には満員の約200人が聴講した。登壇した同省GXグループ資源循環経済課課長補佐の山口美弥氏は冒頭に「3RからCEへ」と提唱し、現状行われているリデュース・リユース・リサイクル(3R)の枠組みを超えたサーキュラーエコノミー(CE)の必要性を説いた。単なる社会的責任としての環境配慮ではなく、企業の競争力や国の資源安全保障といった経済的なインセンティブを梃子にサステナブルな社会を目指そうという趣旨のように思えた。具体的にはごみ回収といった川下だけではなく、リサイクルが容易で長持ちし、コストも見合った再生材を開発したり、開発を支援する。再生材市場の静脈と動脈、つまり需要と供給の両方を喚起する施策で再生材市場を整備していく、産学官連携を行っていく、などである。これらについては改正資源有効利用促進法や、934者が加盟する「サーキュラーパートナーズ」などが始動している。
興味深かったのは参加者による質疑応答だった。大手製薬メーカーは、再生材のコストを下げるという視点だけではなく、環境製品の付加価値を高める運動が必要だと問題提起し、環境認証マークも業界団体レベルではなく国全体の認証制度をお願いしたいと述べた。大手ネット通販会社からは「最終製品だけではなく包装などの中間資材へのインセンティブも必要ではないか」といった趣旨の意見が出た。国と民間企業の対話の場としても有意義な講演だった。
また2日目(10月15日)には農林水産省大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課食品ロス・リサイクル対策室室長の木村好克氏が登壇した。テーマは①フードロスと②プラスチック汚染――で、国も2点を重い課題と感じているようだ。ただし日本のフードロス年間461万トンのうち、事業者によるものは237万トン(2025年)と2000年比で57%減となっており、国が目標とする60%減まであと一息である。一方プラスチック容器については、フィルム重層構造の容器はフードロス削減やCO2削減にもつながるのであり、「脱プラなのかフードロスなのか」というトレードオフの問題をよく指摘されることを認めながらも、脱プラに向けた国の施策などを解説した。
TOPPANの「レジリエンスパッケージ」
レジリエンスとはラテン語の「resilire(跳ね返る)」が語源とされており、心理学では「逆境を乗り越える力」と解釈されたり、震災学では「災害から回復する都市のしなやかな力」と解釈されてきた。だから、今回TOPPANホールディングスが「レジリエンスパッケージ」というコンセプトを全面に出してきたのは正直に言って驚いた。
TOPPANの甲〆 勲氏によると、ESG経営(環境・社会・ガバナンス)が「攻めの環境対応」であるのに対し、安定したサプライチェーンにより供給者責任を果たすことが「守りの環境対応」である。今回は後者の供給者責任を果たすことを強調し、「レジリエンスパッケージ」をテーマにしたのだろう。
TOPPANの決断の背景にはもちろん、資源安全保障問題、もっとはっきりいってしまえば2026年半ばに起きた「ナフサ・ショック」がある。TOPPAN調べによると、実に64.4%の生活者が石油資源の依存への懸念を持ったという。そういったトレンドを掴み、今回のテーマ設定になったと著者は見ている。
TOPPANは世界各国に生産拠点を持っており、資源安全保障上のリスクにも対応できる。また「マルチパッケージ化」と称し、アルミ箔がなくなった際にはバリアフィルムを、瓶がなくなった場合には紙を提案できるパッケージのラインアップがある。そういった視点から見れば、確かにレジリエンスな供給体制は整っているといえよう。
従来の環境対応製品のPRも行っていた。水性フレキソ印刷、デジタル印刷などはもちろんであるが、EBオフセット印刷はいよいよここまできたかと感じさせた。TOPPANブースの前面には、日清の「あっさりおだしがおいしいどん兵衛」のフタなど、採用事例がずらりと並んでいた。従来のグラビア印刷よりもCO2が148トン、おもて刷りを直接することでプラスチックが20トン削減できるという。

また特色レスに挑戦していることも触れていたが、きちんとECG印刷と言われる多色印刷によるガモット拡張という具体的な対策を掲げていたことも好感が持てた。
ところで、TOPPANは今回、再生材フィルムの製品群を「Relayer」というブランドとして発表した。甲〆氏は、TOPPANの看板商品であり、バリアフィルムの世界トップシェアを持つ看板製品「GLフィルム」のロゴに似ていることからも当社の意気込みが分かる、と半ば冗談で話していたが、リサイクル適正のある再生材の設計技術については今回あらゆるブースやセミナーで提案されており、同社の力の入れようもわかる。リデュース・リユース・リサイクルといえば消費者の意識喚起が焦点であるが、近年はリサイクル適正のある素材開発、具体的にはモノマテリアルパッケージや紙製パッケージの開発など生産者側により重きが置かれていると感じた。
DICが循環型経済の「動脈」と「静脈」にコミット
前回(2024年)から「リデュース・リユース・リサイクル」の3Rでは限界があるとは、さまざまな企業が主張していた。DICは今回もリデュース・リユース・リサイクルに加え、リニュー(代替)・リデザイン(再設計)の5Rを掲げていた。消費者だけではなく生産者側(動脈)と回収・再生産者側(静脈)が一体となって循環型経済(サーキュラー・エコノミー)を構築していくことがTOKYOPACK2026のメインテーマだったといえよう。
DICは再生材の循環のためにはフィルムの①非脱墨→②脱墨→➂脱ラミ――の3段階を踏むことが必要だとしたうえで、脱墨ソリューションの「DeReSus」をブースの前面に出していた。DICはartienceグループの東洋インキと共通の軟包装フィルム脱墨・剥離性を評価するプロトコルを策定したり、トレイからトレイへと再生するリサイクル技術「RePOS」に取り組むなど、循環社会の仕組みづくりに非常に積極的であると感じた。

なお、同社のセミナーをはじめ、あらゆる出展社が「PPWR」について解説していた。PPWRとはEUの包装・包装廃棄物規則のことで、2025年2月11日に発効、2026年8月12日から段階的な実施が始まった。包装廃棄物のさらなる削減と循環経済への移行を目的とし、2030年までに原則として全ての包装材をリサイクル可能な設計とすることを求めている。あるセミナーの登壇者は「いよいよ環境は『努力』から『義務』へ」と説いていた。EUの環境規制が日本や世界にどれだけの影響があるのか、日本もいずれ追従していくのか、世界的な環境規制の流れも注視していかなければならない。と同時に、人口減少が進む日本市場は頭打ちであり、過去10年で2.4倍に膨らんだEU向け農水産食品物輸出に関心が移るのは当然で、PPWRに関するセミナーには開演前から来場者が列をなして並んだ。著者も聴講したが、FCM(EUの食品接触剤規則)などを含めた包括的な対策と、目まぐるしく変わる規制のキャッチアップが重要であると感じた。
そのほかの資材メーカーでは王子マテリア(王子グループ)の透明紙材「サンカヨウ」に興味を持った。透明フィルムに代替し、グラシン紙やセロファンよりも安い。透明度を高めるには光の乱反射を防ぐ平滑性と密度が必要であり、最適なパルプ配合比率やアクリル樹脂率を導き出し開発したとのことである。すでにマド付封筒などで採用されている。
印刷会社も環境製品を出展
印刷会社の展示会ブースでは、シール印刷売上首位の大阪シーリング印刷(OSPグループ)が大日本印刷、TOPPANに匹敵する規模のブースを構え注目されていた。①マーケットインの製品と②プロダクトアウトの製品の2つのコーナーには、ずらりと新製品や参考出品製品が並んだ。①マーケットインの製品については、上層のラベルをめくると下層のラベルが見せられ、購入前と購入後に異なるメッセージを与えることができる「きせかえできる2層ラベル」(近日発売)、透かしによりデザインの表現が広がる「レーザー加工装飾ラベル」(参考出品)、底部と上部を固定することで異なるサイズの瓶にも汎用できる「四合瓶専用パッケージ」(近日発売)、②プロダクトアウトの製品については、クイックサービスレストラン向けの「筆記・印刷可能なサーマルレジロール」のほか、発色原料の一部にバイオマス由来の顕色剤を使用したサーマル紙「Treeloop Thermal」やモノマテリアル(単一素材)のラベルなど環境製品も目立った。

福岡県久留米市に本社を置く紙器・シール印刷、包装資材商社の丸信のブースも目立った。和紙に箔を印刷しその上にカラー印刷を施すことで圧倒的な高級感をもたらす「プリズム印刷」や、独特の質感と輝きを放つ原紙「コズピカ」、同社オリジナルファンシータック紙「TANT N-9」など高付加価値ラベルを紹介していた。また今後10年も継続する見込みとなったカーボンゼロ工場の取り組みや、食品メーカーと生産者をマッチングさせて新たな食品を開発するためのサイトで、現在700社以上が登録する「食品開発OEM.jp」など、食品業界向けソリューションの数々も紹介していた。

千代田グラビヤは2025年に導入したインクジェット印刷機「Truepress PAC 830F」(SCREEN社製)によるサンプル展示を行い、グラビアとそん色ない品質をアピールしていた。同社では2000m未満をIndigoで、2000~4000mをTruepress PAC 830Fで、それ以上をグラビア印刷で行うことで、2030年までにデジタル印刷比率を10%にまで高め、環境対応と最適在庫を目指すとしている。そのほかピロー包装機用ジッパー付きフィルム「P-ZIPロール」を紹介していた。

富山市を本社に置き医薬品パッケージ印刷で知られている朝日印刷は、医薬品の瓶など円筒状のものに巻き込むことができるラベル「複層ラベル」を紹介していた。情報量が3倍になることで、取扱説明書の代替にもなる。
愛媛県松山市の総合印刷会社・セキは、水性フレキソ印刷の実績をアピールしていた。担当者は「ナショナルブランドを含む複数の企業からラベルや軟包装の仕事をいただいているが、まだまだ伸びる市場だと考えている。BCPの側面からもぜひお問い合わせいただきたい」と話していた。
環境対応一色の今展示会のなかで異彩を放っていたのが大日本印刷のブースおよびセミナーだった。2027年1月に製品リリースする「ペルソナインサイト」を前面に出し、AIによるマーケティング支援を提案していた。100人の仮想人格(ペルソナ)に対してインタビューやアンケートができ、消費者インサイトが得られるといプロダクトだが、仮想人格から実際に購買する人間のインサイトが得られるのかという根本的な疑問に著者はぶちあたった。またセミナーの参加者もまばらで、マーケターの参加者もほとんどいないセミナーからも、本当に同社が同製品でマーケティングに成功したのかという皮相な疑問を持った。
お知らせ=2026年11月1日発売の『印刷業界レポート2027』に「TOKYOPACK2026」レポートの完全保存版が収録されています。ぜひご購読ください。












