【2026印刷産業夢メッセレポート】印刷の可能性とAIの活用法を学んだ充実の2日間

「2026印刷産業夢メッセ」(広島県印刷工業組合・中国印刷機材協議会主催)が10月30日・31日の両日、広島県広島市東区の広島ガーデンパレスで開催された。第20回となる今回は、①全日本印刷工業組合連合会の瀬田章弘会長の基調講演、②15のセミナー、➂組合員企業各社の展示会「ペーパーサミットin 夢メッセ」の3本立てで行われ、参加者は印刷メディアの可能性やAIの活用法を学んだ。2日間をレポートする。

「価格競争」から「価値共創」へ

10月30日は開会式に続き、全国約3000社の中小印刷会社を束ねる全日本印刷工業組合連合会の瀬田章弘会長が基調講演を行った。瀬田会長は大要、印刷業界は価格競争から価値共創に転換し、売上をKPI(目標)とした拡大ではなく顧客との生活文化創造パートナーになるべきだとし、具体的な事例としてプリントサービスとレンタルルームを兼ねたカフェや、廃墟となっていた採石場をリノベーションした観光施設を開設した株式会社井上総合印刷(栃木県宇都宮市)、竹取物語をモチーフとした観光ツアーを企画し大手旅行会社とタイアップした株式会社ミヤプロ(香川県高松市)、地元にデータセンター建設を構想している株式会社アドヴォネクスト(山梨県中央市)を紹介した。また全日本印刷工業組合連合会の取り組みとして、適正な印刷取引の実現に向けた契約書の共通フォーマットの提供や、女性経営者や社員が集う「印刷女子」、全国の仲間と作業交流ができるポータルサイト「J-CONNECT」などを紹介した。

瀬田会長による基調講演

 

AIづくしのセミナー

30日午後と31日は各メーカー提供のセミナーが開かれた。15講座のうち6講座がAIをテーマにしており、AI活用の実際と未来が模索された。

株式会社SCREEN ICTソフトウェアによるセミナーでは、AIを活用している企業のうち91.6%が業務効率化に成功している一方、売上や利益の向上につながった企業は3.9%に過ぎないというデータを挙げて、「顧客価値・売上につなげられるかが次の勝負」とした。またAIは若手社員よりもむしろリーダーが主導することで、リーダーの経験と知識が組織全体に増幅されるとした。またデータが大量にあり、ルールが多く、確認作業が多い印刷業務はAIとの相性がよいとした。後半では同社のAIソリューションの展望が示され、MIS(基幹システム)とSCREENのワークフロー「EQUOS」でつなぎ自動化を行う「デジタルコンテンツファクトリー」にAIを実装し、フローをつなぐ作業を行わせる構想や、Microsoft Teamsをあらゆる業務システムのポータルにして一元管理する構想、熟練工のナレッジをスマートグラスで記録しAIで分析、次の世代に活用させる構想、QRコードやスマートグラスなどを駆使し校正をAIで行うループを作る構想などを披露した。

また富士フイルムビジネスイノベーションジャパンは、パワーポイントを綺麗に整理して見せるテクニックとして、インフォグラフィックやグラフィックレコーディングなどの技法をCopilotにプロンプトを送るだけでできるティップスを紹介したのち、同社の①レボリアクラウドマーケティング②レボリアクラウドプロダクション➂粉体トナー機のフラッグシップ機「レボリアPC2120」を紹介した。用紙プロファイラー・プリントリコメンデーション・RGB補正などのツールにAIを搭載し、印刷前段階が80%削減されるという。

15のセミナーも開かれた

経営者・経営幹部は大いに戸惑ったものの、DTP制作オペレーターの参加者を熱狂させたセミナーがリコージャパン株式会社提供の「Adobe最新トレンドと生成AI活用法」だった。デザイナーの鷹野雅弘氏(株式会社スイッチ)は、デフォルトのIllustratorではできない「表組」「アートボードへのノンブル」「アウトライン化されたフォントを数年後復元する」「ガイドに文字列を整列させる」の4つの作業を自作スクリプトを使って一発で行い、参加者をどよめかせた。そしてスクリプトの作成は今やChatGPTやClaudeといった生成AIにプロンプトを打てばコードを書いてくれるのであり、鷹野氏は実際に数分で自作スクリプトを作成してみせた。そして生成AIで作成するスクリプトは面倒で、繰り返しで、Illustratorにはできない作業をやってくれ、オペレーターの人為的ミスや負担をなくしてくれると強調した。

座学だけでなく、31日午前には全日本印刷工業組合連合会提供のセミナーでAdobe社による画像生成AIツール「Adobe Firefly」をPCで操作するハンズオンのワークショップも行われた。

「ペーパーサミット」が広島で初開催

大阪で始まった印刷商品展示会「ペーパーサミット」は東京に続き、今回広島の夢メッセでも初めて行われた。段ボールの超大型鳥居を展示したり、リング製本や缶バッジの製作体験も行われたが、広島県印刷工業組合の組合員企業18社による商品提案が充実していた。

株式会社広瀬印刷(広島市)は広島県の名勝「三段峡」のガイドブックや観音折りの地図、アクリルキーホルダーなどのグッズをNPO団体とタイアップして制作し、ガチャを設置するなどして地域活性化をアピール、さらに広島の平和を祈った折り鶴の廃棄物を再生した「祈りの鶴」などを紹介していた。

地元名勝のグッズを制作し地域活性化ビジネスを展開する広瀬印刷のブース

オフ輪からPOD機まで擁する株式会社ユニックス(呉市)は、今回はガーメントプリンターや刺繍機によるTシャツ・トートバック・マグカップなどオリジナルグッズを紹介していた。三和総合印刷株式会社(福山市)はPETによるスタンドやボックスなどのグッズを展示、東京にも支店を持つビジネスフォームのセイコービジネス株式会社(呉市)は今回は災害時の連絡メモ紙を展示した。このほか点字印刷の有限会社ハラダ印刷(広島市)、汎用性のあるミシン目入りの台紙を提案したサンヨーメディア印刷株式会社(広島市)など、ニッチ商材を提案する企業もあった。

経営者同士では顔見知りでも従業員同士や各社の商材については知らないことも多く、一般参加者はもちろん、出展企業同士が名刺交換や商品案内を盛んに行っており、作業交流のきっかけになることをうかがわせた。全日本印刷工業組合連合会の瀬田会長によると、「ペーパーサミット」は今後、九州印刷情報産業展、山梨県、北海道でも行われるという。

以上、2日間をレポートした。ペーパーサミットでは紙メディアの可能性が示されたほか、生成AIでスクリプトを作りIllustratorやExcelの作業を自動化させるなど、生成AIが業務効率化に圧倒的な威力を発揮することが学べた。一方で画像生成AIによるハルシネーション(エラー)や知財権の侵害、さらには社内の暗黙知を外部AIに任せると企業の競争力低下につながるのではという懸念もきちんと説明されていた。メリットとリスクを正しく把握し、キャッチアップしながら、AIによる企業価値向上を目指さなければならないと感じた。

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